田舎町の外れに、古びた神社があった。
その神社は、かつて豊かな稲作を支えた神々を祀る場所であり、村人たちにとって大切な存在だった。
しかし、時が経つにつれ、神社は忘れ去られ、朽ちていった。
現在、そこに足を運ぶ者はほとんどいなかった。
ある日、大学生の佐藤健二は、友人たちと肝試しをすることになった。
彼らは洒落にならない噂を耳にしていた。
それによると、神社の奥にある「闇の神」と呼ばれる存在に出会うと、人生が狂うというのだ。
好奇心旺盛な健二は、さっそくその神社を訪れることを決心した。
神社の境内は、鬱蒼とした木々に覆われ、昼間でも薄暗い雰囲気を醸し出していた。
友人たちは少し怯えながらも、健二の後をついていく。
神社の本殿に辿り着くと、そこには見たこともないような古びた石の神像が立っていた。
それは目を閉じ、何かを考えているように見えた。
「これが噂の闇の神か…」と健二はつぶやき、みんなを振り返った。
「写真を撮って、証拠を残そうぜ!」友人たちが戸惑いながらも、スマートフォンを取り出し写真を撮る。
すると、突然、強風が吹き、周囲の木々がざわめいた。
何かが感じられる瞬間、健二は不思議な感覚に襲われる。
その時、友人の一人である高橋が急に顔色を変えた。
「おい、誰かいるぞ!見て!」と指を指す先に、薄暗い神社の奥に白い影が見えた。
しかし、その影はすぐに消え、ただの風のせいだと全員が思った。
健二は興奮して、「もう一度、見に行こう!」と提案する。
健二が先頭に立ち、深い闇の中へ進む。
静けさが支配する中、健二の心臓の音だけが響き、他の友人たちも緊張感を抱えていた。
急に背後から女性の声が聞こえた。
「助けて…」その声は、明らかにこちらに向かってきている。
しかし、視界には誰もいない。
思わず振り返ると、健二は唖然とした。
背後の木々の間に現れたのは、彼の幼馴染である小林朋美だった。
彼女はかつてこの町を離れ、東京に住んでいると言っていたはずだった。
「朋美、どうしてここに?」驚きつつも、健二は彼女を呼ぶ。
彼女の表情は暗く、まるで彼を見ていないかのようだった。
「…この場所には、深い闇があるの」「闇の神は、因縁を持った者を呼び寄せる」と呟く。
健二たちは混乱し、何が起こっているのかわからなくなる。
朋美の周りに不気味な影が現れ、その場の空気は一変した。
「今、計算しなさい…間違えが生じる!」と声が響く。
何を意味しているのか分からず、健二たちは後退りした。
背後には闇の神の姿がはっきりと見えた。
巨大な影は、彼をじっと見つめている。
息が詰まりそうになる中、朋美は彼に向かって「逃げて!」と叫んだ。
影に飲み込まれそうになりながら、健二は急いで朋美の手をつかみ、引きずり出そうとした。
だが、朋美の体はまるで重力に逆らえないかのように動かない。
「算」の法則が絡み合い、運命は決まっているかのように見えた。
健二は必死で手を離そうとしたが、朋美は微笑みながら言った。
「私はもう、解放されなければならないの」
その瞬間、朋美の姿が闇の中に溶け込み、消えてしまった。
何もかもが静止したように感じられた。
後には健二だけが立ち尽くし、何が起こったのか理解できなかった。
友人たちは恐怖に怯え、彼を振り返ることもできずに走り去る。
健二は神社の闇に引き込まれ、朋美の声が耳元で優しく囁く。
「助けてほしいと思ったことが、因縁を生むの…」彼の心には、逃れられない算の支配が残り続けた。
結局、健二は田舎町の神社に取り残され、その後誰にも見つけられなかった。
神社では今でも、故郷に帰りたいと願う者の声が夜ごとに響き、その願いをかけた者は、今も闇の中でさまよい続けている。