「神社の誓いと見えない影」

在(あり)は、都会の喧騒から離れた小さな村に住んでいた。
彼女は明るい笑顔と華やかな性格で、村で評判の少女だった。
しかし、彼女には一つだけ気掛かりなことがあった。
それは、村の中心にある古びた神社にまつわる恐ろしい噂だった。

噂によれば、その神社には近寄ってはいけない「見えないもの」が住んでいるという。
この神社の前を通るたびに、在はそれが引き寄せられるような感覚に襲われていた。
ある日、彼女は友人の健太とその噂について話をしていた。

「どうしても行ってみたいの。あの神社の真実を確かめたい」と在が言った。
健太は少し不安そうだったが、彼女の熱意に押されて、一緒に行くことを決めた。

二人は村の古い道を辿り、神社に向かった。
道中、薄暗い森を通り抜けると、巨木に囲まれた両側に神社の石の鳥居が現れた。
その瞬間、両者は不安を覚えた。
しかし、在は笑顔を作り、「一緒に超えよう、誓って!」と言った。

鳥居をくぐると、静寂が一層増し、何かが周囲を包むような感覚に襲われた。
同時に、耳をつんざくような「叩」という音が近くで聞こえた。
二人は驚きながら目を合わせたが、周囲には特に何も見えない。

「誰かいるのかな??」と健太が言うと、在も不安ながらに首を振った。
「もしかしたら、見えないものが……」

神社の奥に進むと、三体の古びた像が並んでいた。
その周りには、長い間放置されていた絵馬が散乱している。
健太は一つを拾い上げ、「この絵馬、何か書いてあるよ」と言い、この場に何かの誓いが伝わるのを感じた。

その時、もう一度「叩」という音が後ろから聞こえてきた。
振り返ると、先ほどの影がわずかに揺れるのが目に入った。
恐れを抱きながらも、在はその影に向かって進もうとした。

「待って、あんまり近づかない方が……」と健太は止めようとしたが、在はそのまま影に近づいていった。
すると、暗闇の中から「誓いを忘れないか?」という低い声が突如響いた。

驚いた在は思わず立ち止まった。
声の主はどこにも見えなかったが、その存在感に圧倒される。
健太は一歩後ろへ退いた。
「もう帰ろう。ここには何か良くないものがいる!」

しかし、在は強く「私は、絶対に逃げない」と言った。
彼女はその場で地面にひざまずき、神社に誓いをささげた。
何があってもこの場所を忘れない、そしてこの神社を守ると。

その瞬間、神社の周囲の空気が変わり、響くような「叩」という音が何度も途切れずに続いた。
影は時折、その姿を現すが、いつの間にか姿を消していた。

「やっぱり、何かいる」と健太が呟く。
「もう帰ろう、早く!」

しかし在は、大きな声で言った。
「私はこの神社を見捨てるわけにはいかない。私が誓ったのだから!」

その時、神社の真ん中から突如、大きな影が現れ、周囲を包みこんだ。
そしてその影は、かつての村人たちの姿を一瞬だけ見せた。

「お前が誓うなら、我々もあまたの願いを抱いている」と語りかけた。
その瞬間、健太は確かに誰かが見えたと感じたが、在はその影を恐れず、しっかりと立ち向かっていた。

やがて、その影は静まり返り、周囲は元の静寂に戻った。
心の中の恐怖は不安定で、真実が何だったのか分からなかった。
ただ、在の誓いだけが残り、彼女は立ち尽くしていた。

二人がその場を去る頃、神社は静けさを保っていた。
彼らが振り返っても、もはや何も見えなかった。
しかし、その後も在の脳裏には、神社での出来事が鮮明に刻まれていた。
彼女はその誓いを、これからも忘れることはないだろう。

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