「神社の念」

深い森の奥にある、古びた神社。
しかし、そこには長い間人が寄り付かないまま、ひっそりと存在していた。
神社の近くに住む村人たちは「この神社には何か悪いものが宿っているに違いない」と語り継いできた。
その影響で、子供たちは神社の近くを通ることすらためらった。
中でも、特にその神社を恐れていたのは小さな村に住む少女、薫だった。

薫はまだ10歳だが、好奇心旺盛な性格で、両親に禁止されても森に足を踏み入れることが多かった。
ある晩、薫は友達の信と共に、夕暮れの中、神社に向かうことを決めた。
彼女たちの心には、神社に隠された秘密を解き明かしたいという思いが渦巻いていたのだ。

「だんだん暗くなってきたね…本当に行くの?」と、信が少し不安を見せる。
「大丈夫、ちょっとだけ見てみようよ。もしかしたら、何もないかもしれないし」と薫は微笑んで答える。
彼女の言葉に励まされ、2人は神社の境内に足を踏み入れた。

入口に立つと、静寂が辺りを包んでいた。
神社の本殿は古びていて、落ちている木の葉や細い枝がその周りを取り巻いている。
薫たちは恐る恐る中に入った。
中は薄暗く、香煙のような独特の香りが漂っていた。
その瞬間、薫の身体に不思議な震えが走った。
「何か、いる…」と彼女は呟いた。
その言葉を聞いた信は、何かに怯えているようだった。

「そうだね、もしかしたら本当に何かが…」そのとき、突然、静けさを破るように、電気が点いた。
二人は驚いて顔を見合わせた。
それは古い神社にしては珍しい現象だった。
薄暗い中で明かりが灯り、周囲が一瞬明るくなった。

「どうしてこんなところに電気が?」信は恐れを込めた声で言った。
「わからない。でも、あの灯りに近づいてみようよ。」薫は思い切って一歩を踏み出し、明かりの方へ向かった。
信は何かを感じ取ったようだったが、恐れを振り払うように彼女の後を追った。

明かりの源に辿り着くと、そこには古びた神社の神像が鎮座していた。
その神像の目は、まるで生きているかのように光を放っていた。
「この神様…何かを願っているのかもしれない」と薫は呟いた。

すると、神像から不気味な声が響いた。
「お前たち、私の念を感じるか?」二人は絶句した。
まるで電流のような声が身体を貫く。
信は恐怖で身動きが取れなくなり、薫も心臓が高鳴った。
「私たちは何もしない。帰るよ!」と信が叫んだが、その声は逆に神像の力を強めるように感じた。

神の声は次第に高まっていく。
「あなたたちには、私の代わりに祈りを捧げてもらう必要がある。さもないと、私の怒りを買うことになる…」言葉が続くうちに、周囲の空気が変わり、薫の頭に痛みが走った。

「どうしよう、薫!早く逃げよう!」信が叫ぶが、その瞬間、神像はさらに強い電波を放出した。
空間が歪み、二人はその場に立ち竦む。
とっさに薫は心の中で祈りを唱えていた。
「神様、私は何も悪くありません。お願いだから、私たちを許してください…」

その言葉が神像に届いたのか、突然の静寂が訪れた。
「お前の念が通じたようだ。だが、忘れまい。この神社には、まだ多くの者たちが隠れている。」薫は不安を抱くが、何とか神社を後にしようと必死になった。

やがて、彼女たちは境内から逃げ出し、安堵の息を吐いた。
しかし、心のどこかにはまだ神像の言葉が引っかかっていた。
果たして、彼女たちが見たものが真実なのか、ただの幻想なのかは分からないが、神社を訪れる者たちの中には、確かにその念の影響を受ける者がいるのかもしれない。

それ以来、薫と信は神社には近づかなくなった。
村人たちの警告を守り、彼女たちの心の奥に潜む恐れを思い出しながら、決して忘れないことを誓った。

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