神々の住まう高天原では、ひときわ古い廊が静かに佇んでいた。
その廊は、神々の間を結ぶ重要な道でありながら、長い間誰にも訪れられることはなかった。
しかし、ある日、古い神社の老参拝者である大介がその廊に引き寄せられるように足を踏み入れた。
大介は、神社に仕える長い歳月の中で、多くの神々を見てきた。
彼の心には、神々との深い縁が宿っていたが、同時に彼の心の奥には隠された真実があった。
長い間彼は、自らの忘れ去られた記憶を抱え、心の中でモヤモヤとした感情に苦しんでいた。
廊に入ると、空気が一変した。
重苦しい静寂の中に、微かなさざめきが響いてきた。
それは、神々の声とも、彼自身の心の声とも取れない不思議な音だった。
大介はその音に導かれるように、廊を進んでいった。
進むほどに、廊にかかる影が深くなり、何も見えない暗闇が彼を包み込んだ。
しかし、その暗闇の中で語りかけてくるように響く声があった。
大介はその声に耳を傾けるうちに、徐々に自らの心の深い部分へと導かれていく。
「真実は、ここに隠れている。」その声は囁いた。
大介はその言葉にハッとさせられ、目を閉じて心の奥底に眠る記憶を探り始めた。
すると、かつての自分が浮かび上がる。
その姿は、はるか昔、神々の祝福を受けていた頃の自分だった。
しかし、その幸福な記憶の裏には、隠された苦悩があったことに気づいたのである。
心の深くに隠されていたのは、神々との交流の代償として何かを失ったことだった。
大介は、神々との多くの会話の中で、自らの存在の意味を見失い、忘れ去った特別な何かを求め続けていた。
しかし、その「何か」は自分の心の中に、真実として眠っているということを理解した。
廊を進むうちに、大介はついに、一つの扉に辿り着いた。
扉には、光が漏れており、その先には神々が待っているかのような温かな気配があった。
大介は一瞬躊躇い、心の中で葛藤した。
しかし、その光が彼を引き寄せる力となり、彼は扉を開けて中に入った。
その先には、かつての神々が彼を迎え入れていた。
彼らの表情は温かく、懐かしさが溢れ出ていた。
しかし、大介は何かが違うと感じた。
神々は、彼の心の闇をも認識しており、それを清めるための準備をしていたのだ。
神々は彼に言った。
「真実を受け入れることが、心を自由にするカギだ。」
大介は、自らの心に隠された痛みと向き合う決意をした。
その瞬間、彼の心の中にあった霧が晴れ、長い間抱えていた恐れが洗い流された。
そして、彼は自らの存在を再認識した。
神々との縁は、ただ外に求めるものではない。
自分の心の中にこそ、真実の存在があったのだ。
その後、大介は廊を後にした。
廊の先に広がる光景は、かつての重苦しいものから、希望に満ちたものに変わっていた。
心の奥深くにあった真実を受け入れることで、多くの神々との縁を新たに築くことができたのだ。
彼はもう、孤独ではなかった。
大介はこの体験を通じて、真、覚、心の三つを知った。
真実を知ること、覚醒すること、そして心の隙間を満たすこと。
廊の向こう側で見つけたものは、彼のこれからの生き方を変えるだろうと確信しながら、彼は新たな一歩を踏み出したのだった。
