古びた社の前に、一人の青年、田中健太が立っていた。
彼の村では、長年にわたりこの社が忌み嫌われていた。
村人たちは、その社の奥に潜む「敵」と呼ばれる存在から自分たちを守るために、決して近づいてはいけないと教えていた。
しかし、健太はその伝説に興味を持っていた。
子供の頃からの好奇心が彼を駆り立て、ある晩、彼はついにその社に足を踏み入れる決意をした。
月明かりの下、社の扉はひっそりと開いていた。
やや緊張しながら中に入った健太は、薄暗い空間に目を凝らした。
社の奥には神棚があり、そこには古びたお札や、神の像が鎮座していた。
だが、何かが違った。
時折、ひやりとした風が吹き抜け、そのたび彼の背筋に不安が走った。
進むにつれて、健太は何かの気配を感じた。
まるで誰かが自分を見ているような、そんな錯覚に陥った。
周囲を見回しても誰もいない。
彼は少しずつ奥へ進み、社の裏手に隠された小道を見つけた。
その道は薄暗く、苔むした石畳が続いていた。
「この先に何があるんだろう？」健太は心の中で自問しながら歩き続けた。
すると、突然、目の前に罠が現れた。
それは古びた木の柱の上に、粘土で作られた人形が並べられている光景だった。
人形の表情は恐ろしげで、まるで周囲を見張っているかのようだった。
「これは何だ…？」健太は不安になり、後退りしようとしたが、すでにその瞬間、木の柱が崩れ落ちていく。
彼は咄嗟にジャンプして避けたものの、突然背後から冷たい手が彼の肩を掴んだ。
「うわっ！」健太は振り返り、誰もいないことに驚いた。
しかし、その恐怖感はますます強まった。
自分の心の奥底から湧き上がる「敵」の存在を感じられたのだ。
彼は急いで社の外へ逃げようとしたが、そこには媚びるようにして、彼の行く手を阻む人形たちが並んでいた。
その瞬間、周囲の雰囲気が変わり、闇が彼を囲んだ。
不気味な声が耳元で囁く。
「戻れ、戻れ…おまえはこの社にいる敵に歯向かう者だ。」恐怖と混乱の中、健太は本当に人形らが生きているかのように感じた。
彼は心の底から逃げ出したいと思ったが、足が動かなかった。
「どうしよう…！」彼は煩悶しながら思い描いた。
逃げ出すことができなければ、運命は引き寄せられるしかなかった。
健太は一念発起して、人形たちの前に立ちはだかり、勇気を出して叫んだ。
「俺は恐れない！この社の真実を知りたいんだ！」
すると、周囲の風が凪ぎ、静寂が戻った。
人形たちは一瞬、ぴたりと動きを止め、彼を見下ろすかのように無言で立ち尽くした。
そして、深い闇から一つの影が浮かび上がり、目の前に立つ人形の一体が口を開けた。
「勇気ある者よ、選べ。敵として扱うか、真実を知る者として受け入れるか。」
健太は一瞬心が揺らいだが、彼は自分が選ばれし者であると信じた。
「真実を知りたい。その敵の正体を教えてほしい！」その言葉を発した瞬間、社全体が震え始めた。
人形たちはそれぞれに微笑み、健太に向かって手を差し伸べる。
「おまえは試練を受ける者だ。しかし、恐れず進み続ければ真実に辿り着くことができるだろう。」
その夜、健太はその社で敵としての試練や、勝利の秘訣を託された。
彼の心には強い決意が芽生え、真実を知るための新たな冒険が始まるのだった。
しかし、心の奥にはいつまでもその不気味な囁きが響いていた。
「戻れ…戻れ…」
