「瞳の誓い」

その村には、伝説のような話があった。
古くから住む者たちが語り継いでいるのは、「瞳」という不思議な現象である。
祖の代から受け継がれているこの村には、一家に一つ、代々の祖先から与えられた「瞳」が宿っているという。
それは、村人の誓いを守るためのものであり、その瞳を持つ者は村を見守る役割を果たす。
だが、その代償は非常に重く、失った者は決して戻ってこないという。

ある日、幼い頃からその話を聞いて育った姉妹、結衣と花音は、好奇心に駆られ村の北端にある古びた神社を訪れた。
神社は薄暗く、木々に囲まれた神秘的な場所にあった。
その神社の奥には、特別な「瞳」が祀られているという噂があったのだ。

「ねぇ、花音。本当にあそこに瞳があるのかな?」結衣は不安と興奮が入り混じった声でつぶやいた。

「わからないけど、確かめてみようよ。伝説だって面白いじゃない」花音は目を輝かせながら前に進んだ。

彼女たちは神社の中に入っていく。
薄暗い空間に、なんとも言えない静けさが漂っていた。
舞い上がった埃が光に照らされて浮かび、その神秘的な雰囲気を一層引き立てている。
奥の祭壇には、古い木製の箱が置かれていた。

「これが噂の瞳なのかな?」結衣は手を伸ばそうとしたが、何かに引き止められるように感じた。

その時、花音が箱の蓋に触れると、突然周囲が真っ暗になった。
二人は恐怖に包まれ、何が起こったのか理解できなかった。
やがて、暗闇の中に微かな光が現れ、その中に一つの瞳が浮かび上がった。

「結衣…これが、村の瞳…?」花音が震えながら言った。
瞳はまるで生きているように蠢き、二人を見つめ返した。

「助けて…見つけて…お母様…」その声は、囁くように二人の耳に届いた。
結衣はその瞳の中に、自分たちの祖先の顔を見つけた気がした。

「誓って…守るから…見つけ出してくれ…」瞳は揺れ動き、何かを訴えている。
結衣は鼓動が早くなるのを感じた。
彼女たちの祖先が自分たちに託した「誓い」に対する強い意志が、今この瞬間に甦ったのだ。

「この瞳…私たちの役目かもしれない。私たちも守り手になれる。」不安を抱えながらも結衣は決意を固めた。

二人はその瞬間から「瞳」の宿する力によって覚醒した。
幻想的な景色が広がり、彼女たちは不思議な空間に引き込まれていく。
目の前には、村の歴史が映し出され、祖先たちの苦悩や誓いの姿が現れた。

「いつも、逃げ続けていた私たち。でも、今なら分かる。私たちが守るべきものがある。」結衣は声を震わせながら、花音に向かって言った。

その時、周囲の空間が揺れ動き、目の前に不気味な影が現れた。
それは「瞳」を打ち消そうとする影だった。
結衣と花音は恐れず、その影に立ち向かおうとする。

「私たちの誓いは決して揺らがない!」結衣の声が響くと、影は後退した。
二人は一つになり、動かぬ力で影を押し返す。

最終的に、光に包まれた瞳が急速に輝き始め、影を打ち消していく。
影は消え失せ、二人は静けさの中で自分たちの存在を再確認した。

「私たちはやった。祖先の誓いを守ったんだ。」喜びに満ちた声で、結衣は花音に微笑んだ。

だが、結衣は少し不安の影を感じていた。
この瞳が持つ力に対する真の意味が何であるのか、まだ理解しきれていないことを…。
それでも罪悪感と恐れを胸に秘め、彼女たちは新たな役目を果たすため村へと戻る決意を固めた。

村で待ち受ける運命が何であるかを知ることはできなかったが、彼女たちの心の中には、祖先の誓いが確かに生き続けることを確信していた。

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