ある静かな村の外れに、長い年月を経て枯れかけた一本の木が立っていた。
その木は、村人たちから忌み嫌われ、近寄ることすら避けられていた。
なぜなら、その木には不気味な噂があったのだ。
その木は「真の木」と呼ばれ、かつては村の守り神として崇められていた。
しかし、ある晩、村で発生した大火事により村人たちは木の下に避難したが、その木が火を吸い込んだため、多くの人々の命を奪ったという悲しい過去があった。
それ以来、人々はその木に背を向け、誰もがその存在を忘れようとした。
しかし、木はじっとその場に立ち続けていた。
ある日、村に住む小さな少女が、好奇心に駆られてその木の近くに寄って行った。
彼女は木の周りに咲く小さな花々に目を奪われ、まるでそれが彼女を引き寄せるかのようだった。
木に触れると、彼女の手のひらに冷たい感触が走った。
その瞬間、彼女の目の前には幻影が現れた。
それは、かつてこの木の下で命を落とした村人たちの霊だった。
彼らは真っ黒な影を身にまとい、悲しみの表情を浮かべていた。
少女は恐れを感じたが、その霊たちにはどこか哀しみがあった。
「助けてほしい」と彼らは声を揃えて囁いた。
少女はその言葉に胸が痛むのを感じ、木に向かって言った。
「どうすれば助けられるの?」すると霊たちは、木の根元に埋まった何かを示した。
「真実を探し、あの時の恐怖を晴らしてほしい」と。
少女は決意し、次の日から村人たちに呼びかけることにした。
しかし、村人たちはその話を信じず、彼女を嘲笑った。
「あんな木に近づくな。不幸を呼ぶだけだ」と。
少女は力を合わせようとする村人がいないことにとても寂しさを感じたが、霊たちのために真実を明かさなければならないと再び木の下に向かった。
その晩、少女は一人で木の周りに座り、村の昔話を朗読した。
淡い月明かりの中、少女の声が響くと、木がうなり、風が吹き始めた。
霊たちはその音に引き寄せられ、次第に姿を現した。
彼らは少女の話をしっかりと耳を傾け、涙を流した。
そんな彼らの姿を見て、少女は感じた。
「彼らは本当に苦しんでいる。何かを伝え、解放されたいのだ」と。
彼女は強い思いで続けた。
その時、木の幹に一つの裂け目が生じ、光のオーラがほとばしり出た。
少女の言葉が木に届いたのだ。
霊たちは光に包まれ、彼女を優しく見つめながら次第に薄れていった。
彼女は見送ると、心の中に安堵感が広がった。
長い間村を苦しめた恐怖が、ついに解放されたのだ。
次の日、少女は村人たちに向かって、霊たちの声を伝えた。
そして、村人たちも木の存在を敬うことを始めた。
木はゆっくりと再生を遂げ、花々が咲き誇るようになった。
村は再び活気づき、少女はその中心に立っていたが、彼女には大きな秘密があった。
あの夜、木が溜め込んでいた長年の悲しみを解き放つために、彼女が選ばれたのだと。