「理を求める影」

夏のある夜、田舎の道路は静まり返り、空には満天の星が輝いていた。
そこに住む大学生、健太は友人たちと遊んだ帰り道で、ひとりぼっちになってしまった。
周囲にはほとんど街灯もなく、闇に包まれた道に真っ暗な影が無数に潜むのみだった。

「まだ先は長いな…」健太はため息をつきながら、少し急ぎ足になった。
すると、どこからともなく身の毛もよだつような呟きが聞こえてきた。
「誰かいるのか…?」彼は立ち止まり、周囲を見渡したが、目の前の道はただの静寂が広がるばかりだった。

その時、健太はふと気づいた。
道の端に、何かがちらりと見えた。
近づいてみると、それは一台の古びたバイクだった。
まるでここにずっと放置されたかのように、ひっそりと佇んでいた。
健太はそのバイクをじっくり観察し、さらに不吉な気持ちが湧き上がる。

「バイクの持ち主はどこに行ったんだろう…?」彼は心の中でつぶやいた。

バイクの前にしゃがみ込むと、そこには誰かの靴とボロボロのジャケットが落ちていた。
「まさか…事故に遭ったのか?」健太は不安になり、急いでその場を離れようとした。
しかし、その時、またもや呟きが聞こえた。
「理を求める者、ここに来るべし。」

背筋が寒くなり、彼はその言葉の意味を理解できないまま、周囲を警戒しながら急いで走り出した。
しかし、どれだけ走ってもその呟きは彼の耳から離れない。
「理を求める者…とは、一体何だ…?」

さらに道を進むと、突然、道路の真ん中に黒い影が現れた。
その影はまるで人間のようで、健太をじっと見つめていた。
心臓が激しく鼓動し、自然と足がすくむ。
「やっぱり、なにもかもここに来てしまった…」

恐れを振り払おうとした矢先、影は健太に向かって歩き出した。
そしてその瞬間、恐ろしい真実が健太の心を揺らした。
影の顔は彼の知っている誰かに似ていた。
その人は、数ヶ月前に事故で亡くなった彼の親友だったのだ。

「健太…理を求める者は、未だ果たされていない宿命を解かなければならない。」彼の親友の声が響く。
その表情は薄暗い光の中でも憎しみを含んでいた。
健太は絶望感に襲われ、反射的に後退した。

「どういうことだ…!お前は…死んだはずだろう!?」彼は叫び、否定の気持ちで暗闇から逃げようとした。
しかし、影はゆっくりと近づいてくる。
親友の目は真っ黒になり、「私の未を解き、理を探るのはお前の使命だ。」と繰り返した。

「助けてくれ…!」健太は涙ながらに叫んだが、その声は恐れに飲み込まれた。
影はすぐそこまで迫ってきた。
彼は身動きができず、冷や汗が全身を流れた。

「なぜ理を求める者が私のもとに訪れたのか、理解しなければならない。」影が彼に問いかける。
その声はますます強く響き、健太の心を捕らえた。

何が真実なのか、何を求めているのか分からぬまま、その時ふと実感した。
心の奥底から、彼の親友の存在が消えていく感覚。
「ああ、彼は…どうやってもこの世には戻れないんだ…」

健太は恐怖のあまり、もう一度バイクの方に目をやった。
彼の知る世界と、この37秒間の絶望が交差し、矛盾する現実が目の前に広がった。
理を求めるというのは、自らの過去に向き合うことなのかもしれない。
彼はきっと、逃げられない宿命の中に引き込まれてしまったのだ。

その夜、静寂に包まれた田舎の道路に、健太の姿はもはや見えなかった。
ただ、暗闇の中で呟く声が一つ響き渡っていた。
「未解決の理は、今もどこかで求められている。」

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