真夏のある日の夜、清は友人と一緒にキャンプを楽しんでいた。
彼らは北の山々を目指して行く途中、道を逸れ、薄暗い森の中に迷い込んでしまった。
星も見えないほどの暗闇に包まれた道は、道標も何もないただの土の道だった。
清は焦りながらも、友人たちと共に歩を進めた。
そんな時、ふと彼の目に映ったのは、一匹の狐だった。
狐は黒い毛並みを持ち、目は黄金色に輝いていた。
清は「こんな時間に狐がいるなんて珍しいな」と言い、友人たちもその姿を見つめていた。
狐は道の先を示すように、首をかしげている。
その目は何かを訴えかけているかのようだった。
好奇心に駆られた清は、狐に近づくことを提案した。
「もしかしたら、道に迷った者を助けてくれるかもしれない」と。
しかし、友人たちは「狐は悪いことの象徴だ」と言って、行動を躊躇した。
清はその言葉を無視し、狐の後を追うことに決めた。
狐は静かに先を行き、まるで清を導くかのように進んでいく。
友人たちは不安そうに後をついてきたが、清は狐の存在に魅了されていた。
道は次第に険しくなり、周囲の暗闇が深まっていく。
やがて、狐が立ち止まり、振り返って清を見つめた。
清はその瞬間、何か不吉な予感が胸に押し寄せてくるのを感じた。
再び狐は動き出し、清を一軒の古びた家へと導いた。
その家は朽ち果て、周囲には忌まわしい雰囲気が漂っていた。
周囲の木々は影を引き延ばし、まるで人の形をしたかのように見えた。
清はその不気味さに息を飲んだが、狐の光る目が自分を見つめていることで思わず一歩踏み出してしまった。
家の中に入ると、広間には古い家具と埃がかぶったままの道具が置かれていた。
そこには、数十年前の忌まわしい出来事が刻まれたような空気が漂っていた。
清はそのまま部屋の隅へと進んだ。
すると、突然、体の中に何かが引っかかる感覚に襲われ、清は立ち尽くした。
狐の目が、彼の心の奥深くに潜んでいた忌まわしい過去を思い起こさせる。
忘れ去られたはずの記憶が蘇ってきた。
心の奥から「真実」を掘り起こすかのように。
ふと、家の外から友人たちの呼ぶ声が聞こえてくる。
「清!どこにいるんだ!」。
その声にハッと我に返るが、今や彼はそのことを忘れかけているようだった。
狐の目の奥には、真実を語る何かが潜んでいる。
それは清の心に触れ、彼を過去へと導いていく。
清は思わず心の中の声に耳を傾けた。
罪深い行いをした人々が、今でも家に縛り付けられている様子が目に浮かんだ。
狐はその忌となる道を見守っているのだと気づいたとき、彼は恐怖に襲われた。
悪しき行為がもたらしたこの場所は、誰も立ち入ることを許されない場所だった。
しかし、彼が知ってしまった事実は決して消えない。
狐は彼にその真実を教えるために現れたのだ。
清は友人たちの声が遠くなっていくのを感じながら、狐の目を見つめ続けた。
真実とは時に痛みを伴うものだが、逃げてはいけないと自分に言い聞かせた。
狐は微かに首を振る。
彼女は彼の決断を見守り、彼が選ぶ道に耳を傾けるのだった。
そして、清は選んだ。
忌まわしき過去と向き合うことを。
狐はそれを認めてくれたかのように、ゆっくりとその場を離れていく。
清と共に、先に進むべき道はどこかに残っているに違いない。
その道を選び続けることで、彼は自身の運命さえも切り開いていくことを誓った。
暗闇は彼を待っているが、恐れずに歩む先に光は必ず見えるはずだと信じて。