「無の影に消えた良子」

彼女の名前は良子。
平凡な生活を送る彼女は、友人たちとともに無気力な日々を過ごしていた。
そんな中、ある日、良子はふとした思いつきで友人たちと一緒に心霊スポットを訪れることに決めた。
噂によれば、そこには「無」という場所があり、何か特別な現象が起こるという。
それは本当に迷信に過ぎないのか、それとも何か事実が隠されているのか、皆の興味がかき立てられた。

その夜、仲間たちは車で無へと向かった。
少しずつ暗闇が迫る中、良子は一抹の不安を覚えていたが、好奇心がその思いを上回る。
無に到着すると、周囲は静寂に包まれ、月明かりも乏しい。
仲間たちと共に、何かが起こることを期待しつつ、ふざけあったり、笑い合ったりした。

「本当に何かいるのかな?」と一人の友人が言った。
「元気が出て、夢に出てきたらどうする?」

良子は笑いながら答えた。
「夢に出てきたら、逆に会いに行くかもね。」それが冗談だと皆が思っている時、突如として風が強く吹き荒れ、誰もいないはずの方向から声が聞こえてきた。
その声はよく通り抜けるようで、まるで彼女たちに「来てほしい」と誘いかけているようだった。

友人たちは一瞬恐れるも、「何もないわけない」と肝試し気分で深い森の中へと進んでいった。
しかし、静けさが戻り、友人たちの笑い声も次第に消えていく。
良子は感じた。
何かがその場に存在している。
この感覚はただの恐怖ではなく、何か大きな力が彼女たちを見つめているように思えた。

「もうやめよう、戻ろうよ」と一人の友人が提案したが、他の者は興味が勝り、さらに奥へと足を進めた。
良子もその流れに沿うしかなかった。
彼女は感じていた。
この場所の不気味さ、無の中に潜む何かを。

しばらくして、突然目の前に現れたのは、一体の影だった。
全身が影に包まれたようなその姿は、呪われたように歪んで見えた。
「元の世界に帰りたいか…?」と低い声でささやく。
良子は背筋を凍らせ、友人たちの方を振り向く。
彼らも同様に驚き恐怖に満ちた顔をしていた。
言葉を発することが出来ず、ただただ立ち尽くしている。

影は彼女たちを見つめ、「お前たちが特別な者だ」と彼女に向かって言った。
「我々の中に入ってほしい…あなたたちのもとへ行くために、全員がここを渡る必要がある。」その言葉は不思議と心に響き、良子は何も考えられなくなっていく。

友人の一人が泣き出し、「良子!いかないで!」と叫んだ。
しかし、その言葉も影には届かない。
良子は自分が何をするべきかもわからず、ただ「無」に引き寄せられていく。
次の瞬間、彼女はその場に立っていた。

仲間たちはその後も探し続けたが、良子はどこにも見つからなかった。
影が彼女に触れたその瞬間、彼女の存在は「無」の中にとけ込んだ。
時間が経つにつれ、彼女のことは忘れられ、仲間たちがそれを話すこともなくなった。

数年後、良子を探し求めていた友人たちは、彼女の不在を嘆く。
しかし、すでに彼女は「無」の中で静かに眠っていた。
孤独な場所で、彼女は永遠に探し続けることになるだろう。
忘れ去られた中で、「わ」が彼女を呼ぶ声を聴きながら…。

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