美咲は、近所にある古い園に探検に訪れた。
そこは普段は静まりかえっていて、子供たちも避ける場所だった。
しかし、美咲の好奇心は抑えきれず、彼女はその謎めいた空間に足を踏み入れた。
季節は秋、夕暮れ時の薄暗さが園の不気味さを際立たせる。
彼女は「今日は絶対に特別な何かを見つける」と心に決めていた。
園に入ると、苔むした地面に散らばる落ち葉がかさかさと音を立て、美咲の足元を包む。
枝からは何かが視線を感じ、彼女の背筋が少しぞっとした。
しかし、その気持ちを振り払って、さらに奥へと進んでいった。
そこで彼女は、中心にある小さな池にたどり着く。
池は水面が鏡のように静まり返っており、美咲は思わず水に手を伸ばした。
その瞬間、彼女の後ろで何かが動く音がした。
振り返ると、そこには誰もいなかったが、心の奥に不安が広がっていく。
美咲は思わず池の水面を見つめた。
すると、突然グラグラと揺れ始め、その水面からは火が立ち上がる。
美咲は驚き、逃げ出そうとしたが、足が動かない。
まるで大地が彼女を魅了しているようだった。
火は次第に大きくなり、周りの木々にも炎が移り始めた。
その瞬間、美咲の目の前に、廃墟のような姿の人影が浮かび上がる。
彼女の心臓はドキドキと音を立て、恐怖が体を支配する。
「助けて…」その声は地響きのように響き、美咲の意識の奥深くに入り込んでくる。
彼女はその声が何を求めているのか知りたくなり、少しずつ近づいた。
しかし、火と人影の間には、崩れた石が山のように積まれている。
その石は何かを阻むように見え、彼女は一瞬、迷う。
立ち入りたい気持ちと恐怖の間で揺れ動き、自分を見失いそうになった。
その時、周囲に強い風が吹き荒れ、炎が激しく揺れ動く。
美咲は思わず目を閉じ、その瞬間、彼女の体が軽くなった気がした。
恐怖が何処かへ消えていく感覚と共に、彼女はふと視線を前に向ける。
そして火が消えた瞬間、そこにいた人影が姿を現した。
それは昔、この園で迷ってしまった若い女性だった。
美咲は驚愕し、彼女の目がまっすぐに自分を見つめていることに気づく。
女性は口を開き、震える声で「私を助けて」と言った。
美咲の心に何かが響いた。
「どうすれば…助けられるの?」彼女は聞いた。
その時、女性の表情が変わり、「私のために、この場所から逃げ出して」と告げる。
美咲は思わず逃げ出したい衝動に駆られ、後ろを振り返る。
しかし、景色は全く変わっており、迷路のような光景が広がる。
人影が消えた後、彼女は完全に迷い込んでしまったのだ。
園はもはや現実のものではなく、彼女の心の中の恐怖そのものになってしまった。
果たして美咲は、この迷い続ける園から抜け出すことができるのか。
ただこの場所に隠された秘密が、彼女の運命を決めるのかもしれない。
彼女の心の底に潜む恐怖が、今もどこかで息を潜めているような不気味な静けさの中で。