彼の名前は大輝(だいき)。
小さな町の小学校に通う小学六年生だった。
表向きは元気で明るい性格だったが、実は心の奥に何かを抱えていた。
それは、誰にも言えない不安と恐れ。
特に、夜になると予測できない恐怖感が彼を襲った。
ある日のこと、大輝は放課後に友達と一緒に遊んでいた。
公園でかくれんぼをしている最中、大輝は友達を見失ってしまった。
周りは暗く、彼は一人で奥にある古いトンネルへと足を踏み入れた。
そのトンネルは、大人たちから「滅のトンネル」と呼ばれ、決して近づかないようにと警告されていた場所だった。
そこにまつわる「消えた子供たち」の話は、いつも恐ろしい噂として語られたものであった。
不安を抱えながらも、大輝はトンネルの奥へ進んでいった。
冷たい空気が彼の背中を押すように感じた。
トンネルの奥から何かが呼んでいるような気配がしたが、大輝はそれを無視した。
彼はただ友達を探すために、さらに奥へと歩を進めた。
しかし、突然、視界が暗くなり、耳元でザワザワとした囁き声が聞こえてきた。
驚いた大輝は立ち止まり、周囲を見渡したが、誰もいなかった。
すると、ふと目の前に光る目が現れた。
それは無表情で、彼に向かってじっと見つめている。
「あなたは…誰?」と、大輝は震える声で尋ねた。
その目の正体は、トンネルの奥に眠っていた「消えた子供たち」の一人だったのかもしれない。
彼は逃げようとしたが、体が動かない。
影が彼の周りを取り囲み、冷たい手が彼の肩に触れた。
大輝はその瞬間に、自分の運命が決まったと感じた。
彼の頭の中には「滅」という文字が浮かび上がり、周囲が暗闇に包まれた。
その後、大輝は町に戻ることはなかった。
彼の突然の失踪に、町中が騒然となった。
大輝の家族や友人たちは必死に探し続けたが、彼の行方は分からなかった。
いったい何が起こったのか、誰も答えを知ることはできなかった。
数日後、町の古老が語り始めた「復」の物語。
それは、消えた子供たちの霊がこのトンネルで永遠に彷徨っていること、そして彼らは新たな仲間を求めていることだった。
もし誰かがトンネルに近づけば、その者に取り憑き、再び「消す」ことができると。
一ヶ月が過ぎたある晩、町の誰かがまたトンネルに近づいた。
その光景を見た人々の中には大輝の友達もいた。
彼は「もう戻ってこない」と心のどこかで感じていたが、友達としての愛情が彼をその場所へ導いてしまった。
その夜、友達はトンネルの入り口で大輝の姿を見つけた。
しかし、彼は変わり果てていた。
まるで心を失ったかのような無表情で立っていた。
友達は恐怖を抱きながらも駆け寄り、彼を呼びかけたが、大輝は何も答えなかった。
「大輝!戻ろう!」と叫ぶ友達。
しかし、その声は静まったトンネルの奥に消えていった。
彼の背後に冷たい手が触れ、大輝を引き寄せるように迫ってきた。
友達はその手の冷たさを感じ、身の毛がよだつ思いで逃げ出した。
果たして彼は救われるのか、それとも「消える」のか。
町の伝説は再び続いていく。
滅んだ記憶の中で、彼の声は永遠にさまよい続けるのだった。