「消失の家と囚われた少女」

街外れの静かな路には、一軒の古びた家がひっそりと佇んでいた。
その家は数十年前、住人が次々と姿を消すという奇怪な事件が起こった場所として、地元の人々の間で忌み嫌われていた。
人々はその家を「消失の家」と呼び、近寄ることさえ避けていた。
なぜなら、この家の周りには、異常に大きな木があったからだ。
その木は、神秘的でありながら、不気味なオーラを纏っていた。

ある日、大学生の健太は友人たちとともに、その噂話を耳にした。
彼らは恐怖心を抱きながらも、興味本位でその家に足を運ぶことに決めた。
「消失の家」の真相を確かめるためだ。
健太の友人、優子は少し怖がっていたが、彼女もまた好奇心に負けてしまった。
勇気を振り絞り、友人たちと共に家に向かった。

路を辿り、ついにその家にたどり着くと、異様な雰囲気が漂っていた。
木はまるで生きているかのように、風に揺れては健太たちを見つめているかのようだった。
勇気を振り絞って家の戸を開けると、内側は暗く、ほこりにまみれた家具が静かに佇んでいた。
時間が止まったかのような空間で、怯える心を落ち着かせながら、一行は家の中を探り始めた。

その時、突然、木の根元で微かな声が聞こえてきた。
「助けて…」と、切羽詰まった声だった。
驚いた健太は友人にその声を聞いたか尋ねたが、他の友人たちは声を聞いていなかった。
それでも健太は、その声に引き寄せられるように、家の外に出て木の元へと進んだ。

木の近くに立つと、彼は目を奪われた。
根元にうっすらと人の顔が浮かび上がっているのだ。
それはこの木に囚われているかのような、悲しげな顔立ちの少女だった。
「私を助けて」と再び声が響く。
その瞬間、健太は背筋をぞっとさせながらも、何かに引き寄せられるような気持ちになった。

彼は勇気を振り絞り、周囲の友人たちを座らせ、自分が何をしようとしているのかを伝えた。
「この子を助ける必要がある」。
優子は恐る恐る同意したが、他の友人たちは怖がって家に戻ることを選んだ。
その中でも、優子だけは健太のそばに残った。

健太は何かをしなければならないと感じ、木に手を触れた。
「君は誰?どうしてここにいるの?」と問うと、顔を持つ少女は涙を流しながら答えた。
「私はここに封じ込められている。罪を犯した者として…だから、助けて」と彼女は懇願する。

健太は彼女の言葉を聞き、心の中で何かが変わった。
彼はその少女の過去を知りたくなった。
少女は、自分の依代となる木を怨み、永遠にこの地に閉じ込められていることを語った。
彼女が犯した罪、そしてそれがもたらした代償。
健太は、彼女の過去を理解し、彼女の苦痛を少しでも和らげたいと思った。

「私が手を合せる。君の罪を許してもらえるように祈るから」と健太が言うと、少女は微笑んだ。
その瞬間、木が発する叫び声のような音が響き、周囲の空気が一変した。
健太は身震いしながらも、自分の心の中で彼女を解放することを決意した。

木の根元にひざまずき、健太は心から祈りを捧げた。
ゆっくりと少女の姿が消えていくと、同時に外の風が強く吹き抜けた。
気がつくと、夜の闇が深まり、周囲の景色が変わっていた。
少女は消えたのに、木は以前と変わらずそこに立ち尽くしていた。

その後、健太と優子は恐る恐る家を後にした。
街に戻る途中、彼らはふと振り返り、消失の家を見た。
不気味な木もそのままだったが、どこか穏やかな印象を受けた。
心の底で何かが解放されたような感覚を抱きながら、彼らは静かな夜道を歩いていった。

タイトルとURLをコピーしました