錆びた古い倉庫が街のはずれに佇んでいた。
かつては賑わいを見せていたその場所も、今では人々から忘れ去られ、ただの廃墟と化していた。
時折、風が吹くたびに金属の風鈴のような音が響き渡るのが、何とも不気味だった。
近寄る者はいないが、そんな場所に強い好奇心を持つ少年がいた。
彼の名は健二。
彼は冒険心に満ちあふれ、普段は友人たちと遊ぶ明るい性格をしていたが、時には不気味な話に心を騒がせることもあった。
ある日、健二は友人たちと一緒にその倉庫のことを話し合っていた。
中でも特に興味を引いたのは、「あの倉庫には怪が住んでいて、近づく者を消す」という噂だった。
友人たちは怖がりながらも、話はどんどん盛り上がり、ついには「一度、中に入ってみようぜ」ということになった。
健二はその提案を受け入れることにした。
彼はその夜、友人たちとともに錆びた倉庫に向かった。
薄明かりの中で、倉庫の影は一際大きく見え、まるで何かに守られているかのような神秘的なオーラを放っていた。
彼らは扉をそっと開け、中に入ると、錆びた金属の香りと静けさが彼らを包んだ。
内部は暗く、壁には古びた道具が無造作に置かれ、上にかかる薄汚れた窓から射し込む月明かりがまるで不気味な影絵のように見えた。
友人たちは恐れて後ずさりしそうになるが、健二だけは先へ進むことを決意した。
「大丈夫、何も起こらないよ」と彼は言い、奥へと進んでいった。
その時、目の前に見覚えのない影が動いた。
影は次第にはっきりとしてきた。
それは、かつて見たこともないような、金属のような身体を持った存在だった。
肌は錆びていて、まるで古い道具のようだった。
健二は息を呑んでその存在を見つめた。
影は彼に向かって声を発した。
「私はここで覚えている。あなたたちが私を信じるのなら、私は何もせずとも消えずに存在することができるだろう。」
健二は不安になり、急いで友人たちの元へ戻った。
だが、彼の友人の一人、太郎はすでに怖気づいて逃げてしまった。
その様子を見た健二は何とか仲間を守ろうと奮闘した。
「太郎を呼び戻そう！」だが、周囲にはさらに不気味な静けさが漂い、彼の心は次第に不安でいっぱいになっていった。
影は再び健二に近づき、囁くように言った。
「あなたは、この場所を忘れたがっているのか。それとも、私を信じ、覚えておこうとするのか？」健二は自分の内面と向き合った。
彼は恐れずに目の前の怪を見つめ返し、「君が何を望んでいるのかは分からない。でも、私は恐れないし、逃げたりしないよ」と答えた。
影は不敵な笑みを浮かべ、言葉を続けた。
「私を信じ、覚えているのなら、消えることはない。」その瞬間、健二は周囲の空間が徐々に変わっていくのを感じた。
倉庫の内部が美しく輝き、彼の心にかかっていた重苦しさが消えていくのを実感した。
だが、太郎はもう戻ってこなかった。
健二は彼を気にかけながら、影の存在がこの倉庫に刻まれてきたことを認識し始めた。
彼が逃げたことで、それはさらに強く覚えられてしまったのだ。
影は微笑みながらケタケタと笑い続けた。
最後には、健二は影に導かれ、倉庫の奥で何かを発見することになる。
それがもたらすものが、果たして友人たちを救うことになるのか、それとも自らも消え去る運命に導かれるのか、健二の選択がすべてを決定づけることになった。
彼は影を信じ、逃げないことを決めた。
しかし、その目の前の状況をどうにかできるのか、彼にはまだ確信が持てていなかった。
倉庫の暗闇と、消え去る人々と、未来への不安が交錯し、自らの選択が彼の運命を拭い去ってしまう瞬間を待っていた。
