ある静かな町のはずれに、リオという若い女性が住んでいた。
彼女は穏やかな日常を送る一方、時折夢の中で不気味な何かに追いかけられる夢を見ていた。
その夢に現れる存在は、いつも彼女に手を伸ばしてくるが、絶対にその距離を縮めさせないように彼女は逃げ続けていた。
夢の中でも恐怖の気持ちが高まることもあれば、逆に心地よささえ感じることもあった。
そんなある日、彼女は町の古い図書館で「消えた町の歴史」という本を見つけた。
その中には、かつてこの町が抱えていた悲しい物語が語られており、特に「消された影」と呼ばれる現象が記されていた。
代々続くジンクスとして、この町には誰かが「消える」運命を持つとされていた。
その因果は実際に存在し、今も誰かが忘れ去られているかもしれないと感じる。
リオは自分の夢やその影に対する朧げな記憶を思い出し、興味を抱いた。
町の人々はこのジンクスを恐れていた。
人々は冗談交じりに「影の存在」を語り、誰もがそれを真面目には捉えなかった。
しかし、リオはその相手が本当にどこにいるのか、何を求めているのかを知りたくなった。
彼女は夢の中の存在が、この町に関係しているのではないかと密かに考えていた。
ある晩、リオは夢の中で再びその存在に遭遇した。
彼女は逃げずにその影に近づく決心をした。
影の表情は怯えたようにも見え、彼女はその手を取ろうとしたとき、影は悲しそうに微笑み、吸い込まれるようにどこかへ消えてしまった。
彼女は目を覚まし、思わずベッドから飛び起きた。
夢の中の出来事が実際に起こったように感じ、彼女は何か重大なことが起こりつつあることを直感した。
翌日、リオは再び図書館を訪れ、さらなる情報を求めた。
しかし、何もわからないまま帰るしかなかった。
その晩、彼女は再度夢を見た。
不安を抱えつつも、今度は影に呼ばれるままにその背中を追った。
なぜか彼女の心は急速に高鳴り、果てしない闇の中に光る道を見つけ出した。
光に導かれるように進むと、彼女はひとつの扉の前に立った。
その扉を開けると、そこには無数の影がひしめいていた。
影たちはまるで人々の記憶そのものであり、彼らがこの町から消え去っていった人々の姿だった。
リオは恐怖に震えたが、同時にその場に立ち尽くすうちに彼女自身がその影たちと一つに溶け合うような感覚を覚えた。
「あなたたちは、何を求めているの？」リオは叫んだ。
すると、影の中から一つの存在が彼女に近づいてきた。
それは彼女が夢の中で見た存在であった。
彼は静かにリオに語りかけた。
「私たちは忘れ去られ、消えてしまった存在。あなたもまた、この町の一部であり、私たちの歴史の一部です。しかし、あなたが私たちを忘れ去る限り、私たちは永遠に影であり続ける。」
リオはその言葉に胸が締め付けられる思いがした。
自分もまた、この町の運命に巻き込まれていることを実感した。
彼女はどうにかして影たちを救いたいという気持ちが芽生え、決意した。
「私が、この町の歴史を覚えている限り、あなたたちは存在し続ける。この町の物語を語り続ければ、決して消えない。」
その瞬間、影たちは徐々に光を放ち始め、彼女の周りに美しい光が満ちてきた。
消えかけていた彼らの存在が再び色を取り戻していく。
リオは自分の心に強い感情が芽生えたと同時に、その影たちが彼女に何かを託そうとしていることに気づいた。
夢の中が現実を映し出すことは稀ではない。
彼女の存在、勇気が新たな道を開く瞬間を迎えたのだ。
そしてリオは、町の人々にその存在を語り伝えることを決意し、消えかけた歴史を今一度取り戻すための第一歩を踏み出した。
彼女の心の中で、「影」は消え去ることのない物語として生き続けた。
