ある寒い冬の晩、北海道のとある学校でのこと。
夜遅くに残っていた生徒たちは少なかったが、いつものように勉強を続けていた。
教室内は薄暗く、外から静かな風の音が聞こえるだけだった。
そこにひとりの女子生徒、名は結衣。
彼女は受験勉強のために、意地でもこの夜を乗り越えようと頑張っていた。
その時、教室の後ろでかすかな音がした。
一瞬、顔を上げた結衣は、何かが教室の中を動いているように感じた。
が、振り返っても誰もいない。
心の内で不安が膨れ上がると、彼女は再び勉強に戻ることにした。
しかし、静まり返った教室での「気配」は、次第に彼女の集中を妨げるようになった。
「やっぱり、誰かいるのかな…。」
彼女はそんなことを考え、再び振り返る。
今度は、黒板の前に立つ影に目がいった。
影は薄暗い教室の中で、じっとこちらを見つめているように見える。
心臓が一瞬、鼓動を速めた。
結衣は目をこすり、思わず立ち上がった。
「誰かいるの?」
返事はなかった。
ただ、影はじっとその場から動かない。
結衣は恐怖感に襲われながらも、近づく決意をした。
影に近づくにつれて、異様な空気が彼女を包み込む。
この教室にはかつて、同級生が亡くなったという噂があった。
それは、事故か自殺か、真相は誰も知らなかったが、彼女の頭にその噂が浮かぶ。
「やっぱり、誰か…」
恐る恐るさらに近づく結衣。
すると、影が一瞬揺れた。
寒気が背筋を駆け上がり、声が出そうになった瞬間、影がはっきりと姿を表した。
それは、衣服がぼろぼろになり、顔色が青白い女の子の霊だった。
彼女は恐ろしい表情を浮かべ、結衣をじっと見つめていた。
凍りついたように立ち尽くす結衣は、何も考えられなくなった。
女の子の霊が口を開く。
「私を…助けて…」その声は微かで、どこか悲しげだった。
結衣は思わず後ずさりし、教室の端まで逃げた。
だが、その霊は一歩も動かず、ただ彼女を見つめ続けた。
その夜、結衣はその女の子の霊のことを考え続けた。
なぜ、彼女はこの場所にいるのか? 何か未練があるのかもしれない。
それを知りたいと、結衣は心のどこかで思った。
そして、一週間後、彼女は友人たちとリサーチを始めることにした。
その学校で起きた過去の出来事を探り、亡くなった生徒の名前を知るために。
クラスメートから聞いた話によれば、その女の子は結局、見つけることができず、行方不明のままだった。
結衣は次第に、女の子が本当に助けを求めているのか、自分に何ができるのかを深く考えた。
そして、学校の図書館で古い資料を探していると、彼女が見つけたのは、その女の子の日記だった。
日記には、この学校での出来事や彼女の気持ちが綴られていた。
その晩、結衣は再び教室で女の子の霊と対話を試みた。
自分の中で彼女を理解し、受け入れる覚悟を決めた。
女の子は彼女を見つめ続け、少しずつ表情が和らぐ。
「もう、大丈夫だよ。」結衣はそう告げました。
その瞬間、教室の中が明るくなり、女の子の霊は微笑みながら消えていった。
そして、結衣もその夜を越えて、彼女のように静かに受験を続け、次第にその出来事を思い出深く語り継ぐ時が来た。
この怪談から、彼女もまた成長していくのだった。