「消えた遊園地の人形たち」

高校生の遥は、友人たちと一緒に肝試しに出かけることにした。
しかし、選ばれた場所は、近くの山奥にある「ッ」と呼ばれる古い遊園地だった。
数十年前に閉園され、そのままの姿で放置されていたという噂が広がっていた。
友人たちはワクワクしながら、不安を抱きつつも、彼らの冒険心を刺激する場所に興味津々だった。

遊園地に着いた途端、周囲の雰囲気はいつもとは異なり、薄暗い空の下、朽ち果てた遊具や雑草に覆われた道が広がっていた。
遥は、その光景にどこか期待と恐怖を抱えつつ、気を引き締めた。

「ここ、ほんとにやばい場所らしいよ」とリーダー格の翔が言った。
「昔、遊園地のアトラクションで事故があったらしい。誰かが下敷きになって亡くなったとか…。」

友人たちは翔の話に耳を傾けつつも、楽しさを優先していた。
しかし、遊園地の奥に進むにつれて、森の中から不気味な音が聞こえてきた。
「あ、何か聞こえない?」と遥が言うと、みんなは一瞬静まり返った。

その時、遥はふと足元に目をやった。
そこには、見覚えのない小さな人形が転がっていた。
手がかりを求めて手に取ると、冷たい感触とともに、目がどこか虚ろに感じた。
人形の頬には何かの文字が書かれていたが、非常にはっきりした形では読めなかった。
「何だこれ…?」と呟く遥に、翔が冷静さを欠いた様子で近づく。

「それ、やめておいた方がいいよ。ここには、過去の亡霊がいると言われてるから。」翔の目は恐怖で揺れていた。

心臓が高鳴り、遥は人形をその場に戻そうとした、その瞬間、まるで何かに引き寄せられるかのように、周囲の空気が変わり始めた。
彼女は、目の前の遊園地が生きているかのように見え、一瞬にしてその場の風景が変わった気がした。

友人たちが「下、下にいる」と叫び声を上げているが、その声は次第に遠くなり、全てが雲の中に消えていく。
周囲がまるで暗闇に飲み込まれていく感覚に襲われた。
彼女は、足元が崩れるように感じ、バランスを崩して倒れてしまった。

倒れた先には無数の小さな人形が散乱しており、彼女の周りを取り囲んでいた。
彼女の心には、冷たい恐怖が浸透してくる。
しかし、その時、ひときわはっきりした声が背後から響いた。
「私を連れて行って…。」

遥は振り返ると、そこには黒い影のようなものが立っていた。
その目は空洞で、無数の人形が残した悲しみを感じさせた。
声が再び響く。
「私が閉じ込められているの、助けて…」

恐怖心を必死に押し殺し、遥はその場から逃げ出そうとした。
しかし、何かが彼女の足を引き止め、近づこうとする。
影は笑い、遥の心をさらに締め上げた。
「あなたも、私の仲間になりたくないの?」

彼女は狂ったように走り出し、友人たちの元へ向かったが、仲間の姿はどこにも見当たらなかった。
彼女は切羽詰まって叫ぶ。
「助けて!どこにいるの?」

その時、全身が冷たい恐怖に覆われ、脳裏には小さな人形たちの姿が焼き付いた。
失踪した彼らの情念が、もう戻れないことを証明していた。
遥は足元に転がる人形を見つめ、「あの人形が…」とつぶやいた。

彼女はこの遊園地が、亡霊たちに囚われた彼らの魂の集合体であることに気付く。
「助けてくれ…」遥は呟きながら、もがき続ける。
周囲の空気が再び重たくなる。
彼女の心に呪いが迫り、結局逃げ出すことができなかった。

彼女は、永遠にこの場所から逃れられない運命に囚われてしまった。

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