午後の公園、子供たちの楽しげな声が響き渡っていた。
遊具で遊ぶ姿や、ボールを追いかける様子は、まるで日常の光景そのものだ。
しかし、その陰には誰も気づいていない異変が潜んでいた。
小さな通り抜けられるような道を挟んで、いつも誰も近づかない林が広がっている。
そこには、数年前に行方不明になった子供たちの噂がささやかれていた。
ある日、近所の中学生、健一は友達の翔太と一緒に遊びに行くことにした。
友達は遊具で遊んでいたが、健一だけは何か別のことに興味を惹かれてしまった。
それは、林の奥に続く小道だ。
「ちょっと行ってくる」と言い残して、健一はその薄暗い小道へと足を踏み入れた。
小道に入ると、すぐに周囲のざわめきが消えた。
静けさが支配する中、彼はまだ日が高いのに薄暗い感覚に包まれた。
進むにつれ、視界の奥にぼやけた影が見えた気がした。
子供の姿だろうか、彼は胸が高鳴ると同時に、不安を抱くようになった。
「お兄ちゃん、遊ぼう!」その声が、いきなり背後から聞こえてきた。
振り返ると、数人の子供たちが立っていた。
彼らは笑顔で、両手を広げていた。
だが、その目は虚ろで、何かが違うと感じた。
「あれ?君たち、ここで何をしてるの?」健一は一歩踏み出し、彼らに近づいてみた。
「ここは楽しいところだよ。お兄ちゃんも一緒に遊びたい?」一人の女の子がそう言った。
しかし彼女の声は、まるで他の子供たちによって操られているように聞こえた。
彼はその問いに心惹かれ、恐れを忘れていた。
だが、その瞬間、遠くから友達の声が聞こえ、我に返った。
「健一、どこにいるんだ!」翔太の名前が耳に入り、スッと意識が戻る。
健一は驚いて林の方を見つめた。
そこにはまだ数人の子供たちがいるが、彼らの笑顔は一瞬にして暗くなり、無表情に変わった。
まるで本当にその瞬間だけ、彼の姿を見せたかのように。
「もう遊びたくないの?」女の子が悲しげに言った。
彼の胸に温かさが広がるが、同時に逃げる準備をしなければと思った。
しかし、その言葉がもう一度聞こえた瞬間、彼は後退りしながら、「ごめん、行かなきゃ!」と口にする。
逃げる気持ちが芽生えた。
その時、突然彼の背後から強く押された。
振り向くと、そこには他の子供たちが近づいてきていた。
「逃げないで!一緒に遊ぼうよ!」彼は一瞬、彼らの虚ろな目に吸い込まれそうになったが、必死にのけぞってその場から離れた。
無我夢中で小道を駆け出す。
その音を掻き消すように、子供たちの笑い声が不気味に響いていた。
「お兄ちゃん、待って!」その声が再び後ろから聞こえ、恐怖に包まれた。
ようやく公園に戻ると、翔太が心配そうに立っていた。
「健一、どこに行ってたんだ!心配したぞ!」彼は険しい顔で彼を見つめながら言った。
だが、健一の視線はその先の林に向かっていた。
出口にまで辿り着いたはずなのに、背筋には冷たいものが走っていた。
その日の帰り道、健一は何度も振り返った。
彼の心には、薄暗い林と、そこで出会った子供たちの笑顔が焼き付いて離れなかった。
彼は公園へと続く道を歩き続けたが、心の奥深くに潜む感覚に、決して安全を感じることができなかった。
夜にはまた、林の中から笑い声が聞こえてくるかもしれない。
次に呼ばれるのは、自分かもしれないと思いながら、彼は帰宅の道を急いだ。