「消えた誓いの影」

深い霧に包まれたポにある古びた看護学校。
そこは建物自体が独特の雰囲気を醸し出し、学生たちの間では「呪われた学校」と呼ばれていた。
数年前、この地で起きた一件が背景にあった。
看護の道を志す生徒たちが、精神的な疲弊から心を病み、次々と姿を消していったのだ。
友人を失い、自らも壊れていく仲間を見るのは耐え難い苦痛であった。

その学校に通う田中由紀、彼女は明るくて面倒見の良い性格で、仲間たちの支えになろうと必死だった。
由紀は、そんな仲間たちを守るために、学校の呪いに立ち向かう決意を固めた。
ある夜、彼女と同級生の佐藤健一、岡田真理、安藤智樹の四人は、決意を新たにし、誓いを立てた。
「私たちの絆がこの学校の呪いを打破する」と。

しかし、そこから物事は逆転していった。
夜深くなった学校で、仲間たちと一緒に呪いの真相を探すため、〝禁断の図書室〟に向かうことにした。
その図書室は、過去の看護学校の記録や、そこで起きた悲劇を綴る文献が放置されている場所だった。
薄暗い室内、埃を被った本棚の隙間から漏れる光で、彼らは霊的な手掛かりを求めた。

しかし、彼らが読み始めると、次第に不穏な空気が漂ってきた。
由紀はページをめくるごとに、仲間たちが次々と崩れていくのを感じた。
最初は、軽い頭痛から始まり、意識が朦朧としてきた。
彼女は振り返ったが、健一と真理、智樹の姿は徐々に薄れていく。
由紀の心の中に恐ろしい予感が過り始めた。

「由紀!私たち、どうなっちゃうの?」と真理が言った。
由紀は彼女の言葉に答えようとしたが、その瞬間、真理の姿が消えた。
まるで霧のように、そして何も残さずに。
由紀は恐れと動揺の中で、仲間たちの名前を呼び続けたが、返事は戻ってこなかった。

図書室の中は急に静かになり、感情が崩れていくのを感じた。
彼女は一人取り残され、仲間たちとの誓いを果たすどころか、彼らの存在が消えてしまったのだ。
由紀はパニックに陥れば、ふと一冊の本に目が留まった。
「呪いの誓い」と題されたその本。
この学校の歴史と、呪いの起源が記されていた。

読んでみると、かつて看護生たちが仲間を守るために立てた誓いが、実は呪いのきっかけであったことがわかる。
恐怖が彼女を支配し、さらにページを進めていく。
そこには、仲間同士の絆が試される試練が記されていた。
もし一人でも裏切りを行う者がいれば、その者の仲間は消えてしまうという内容だった。

由紀は震えながらも、「誰も裏切っていない」と、自分を必死で奮い立たせた。
しかし、彼女の心の奥底に、仲間への不安や疑念がつきまとう。
ひたすら仲間を想い続けた由紀だが、彼女の意識がまた薄れていき、意識が闇に包まれた。

気づくと彼女は、学校の廊下に立っていた。
辺りは静まり返り、かつての仲間たちの声はどこへ消えたのか、全くの無音。
目の前には、消えた仲間たちの影が浮かび上がっており、由紀に向かって手を伸ばしていた。
彼女はその瞬間、自分が何か大切なものを失ったことを理解した。

「私の誓いが、あなたたちを消してしまったの?」由紀は仲間たちの影を見つめながら涙を流し、声を届かせる。
「裏切ってはいない、信じていたのに…」彼女の心は、仲間たちを想うほどに痛む。

遺された空虚な思いを抱えた由紀は、仲間たちの思いを「消さない」と心に誓い、今もなおこの学校の呪いに立ち向かっている。
仲間との絆の重みを胸に刻み、彼らが戻ってくることを待ち続ける。
月明かりの下、彼女はただ一人、過去を思い出しながら祈りを捧げるのであった。

タイトルとURLをコピーしました