ある静かな町の外れに、古びた小屋があった。
その小屋は、町の人々にとって忌まわしい記憶の象徴であった。
かつて、そこには「間」という切り裂き魔が住んでいたと語り継がれている。
彼は自らの手で多くの命を奪い、暴力と思うがままに人々を震撼させた。
彼は捕まることなく、突如として消え去った。
その後、小屋は忘れ去られ、誰も近寄ることはなかった。
ある晩、大学生の真理は心霊スポット巡りが趣味の友人たちに誘われ、小屋の前に立っていた。
「ここがあの小屋なの？」と不安そうに尋ねる真理に、友人の海斗が笑いかけた。
「そうだよ！間が最後に目撃された場所だ。肝試しに行こう！」と言い、他の友人たちも同意する。
真理は恐怖を感じながらも、好奇心が勝り、一歩足を踏み入れた。
小屋の内部は暗く、朽ちた木の匂いが漂っていた。
壁には古びた絵が描かれ、中心には大きな円形の絨毯が敷かれている。
友人たちは「間の声が聞こえる」という噂を興味津々で語り合っていた。
「もし聞こえたらどうする？」と、真理は笑いながら言ったが、心の奥では何かが恐れていた。
その時、ふと静寂を破るように小さな音が聞こえた。
それは何かが擦れる音で、小屋の奥から響いていた。
友人たちは緊張感を増し、真理も思わず息を飲んだ。
「行ってみよう」と、海斗が提案し、彼は自ら先頭に立った。
真理は躊躇しながらも、後を追った。
小屋の奥へ進むにつれ、薄暗い空間の中で異様な気配を感じる。
心臓の鼓動が大きくなり、部屋に漂う嫌な空気が彼女の不安を煽った。
「何かがおかしい」と思った瞬間、友人の一人がいきなり大声を上げた。
「何かがいる！」声に驚いた真理は、周囲を見回したが、しかし何も見えなかった。
その瞬間、直感が彼女に警告を発した。
「この場所にいてはいけない」と。
と、友人たちの中に一人、突然消えた。
まるで彼がその場から持ち去られたかのように。
もう一人が慌てて後ろを振り返ると、彼の姿はどこにも見当たらなかった。
「どうしたんだ、彼はどこに…？」戸惑いが広がり、恐怖が真理たちを包み込んでいく。
彼らは小屋から逃げようとしたが、出口がどこか分からなくなってしまった。
内部は異次元の空間に変わり、壁が動く錯覚に囚われた。
「消えた友人を探さなければ…」真理の心に焦燥感が広がっていく。
彼女は強い意志を持って、仲間を探そうと決心した。
しかし、探すにつれて、周囲の風景は異様に変化していた。
「ここは何なの…」声に出して問いかけても、答えは返ってこなかった。
友人たちも一人また一人と、漠然とした影の中に消えていく。
その瞬間、真理は何か近くに感じた。
それは、彼女の視界の隅にあった暗い影だった。
「間…それがこの場所にいる存在なのかもしれない…」
真理は心の中で叫んだ。
「出てこい、私を苦しめているのは誰だ！」と。
その瞬間、目の前に間が現れた。
彼の目は彼女を真っ直ぐに見据え、皮肉な微笑みを浮かべていた。
「貴女は、消えてしまうのよ」と彼は呟く。
彼の声は不気味な響きを持ち、真理の心を震わせた。
彼女は恐怖の中で、まわりを見渡す。
消えた仲間たちの影が彼女の耳元に囁く。
「助けて…」その声は次第に大きくなり、彼女を引き寄せた。
「この場から逃げなくては、私も消える…！」と真理は思った。
だが、間の声は心の奥に響き続ける。
「貴女もこの小屋を選んだ。選ばれたのだ。全て消え去れば、その最後の声も貴女のものになる。」彼女の心に重くのしかかる言葉だった。
真理は全力で逃げようとしたが、もはや出口は見えなかった。
呆然としているうちに、彼女は気を失い、その場に崩れ落ちた。
目が覚めると、彼女は小屋の外にいた。
周囲には何もなく、ただ焼け付くような日差しだけがあった。
振り返ると、小屋はもはやただの廃墟としての姿を残していた。
不思議と悲しい思いが心に湧き上がる。
しかし真理の心の奥には、消えてしまった仲間たちの声が常に残り、彼女を捕らえていた。
「私を忘れないで…また戻って来て…」それが彼女にささやき続けている。
