「消えた光の影」

夜が深まる頃、サトシは友人たちとともに、故郷の近くにある古い神社へ向かっていた。
この神社は、かつて多くの人々が訪れていたが、最近は誰も近づかなくなっていた。
その理由は、神社の周囲に現れる不気味な光のせいだという噂が広がっていた。

「何が怖いって、ただの光だろ?」と、いつも楽しげなリーダーのケンジが言った。
彼は「光を見に行こうぜ!」と仲間を鼓舞した。
みんなは心のどこかで不安を抱えつつも、その言葉に影響されて神社へと足を運ぶことにした。

神社に着くと、周囲は静まり返り、不気味な雰囲気が漂っていた。
月明かりの下、鬱蒼と茂った木々が影を落とし、神社はまるで忘れ去られた古代の遺跡のようであった。
サトシは胸が高鳴るのを感じ、足元を照らすためにスマートフォンのライトをつけた。
それが彼らの唯一の頼りだった。

神社の境内に入ると、不意に冷たい風が吹き抜け、木々がざわめいた。
みんなは固まり、ケンジがその時、「あの光、見えるか?」と指さした。
その先には、まばゆく煌めく淡い光が見えた。
まるで、誰かが燈火を持っているかのようだった。

「近づいてみようよ!」ケンジが高揚した声で言う。
しかし、サトシはその光が何か不気味なものに思え、足を踏み出すことができなかった。
心の奥底に芽生えた恐怖感が彼を捕らえていた。

「サトシ、どうしたの?」友人たちが振り返る。
彼は思わず「いや、なんでもない」と言った。
しかし、彼の心はざわめき、周囲の異様な静けさが不安を増幅させていた。

みんなが光に近づくにつれ、徐々にその光ははっきりとした形を見せてきた。
それは薄い布のようなもので覆われた、霊的な存在の姿だった。
恐怖が仲間たちの間を包み、サトシは「帰ろう」と叫んだ。
しかし、すでに遅かった。

その光が彼らの周囲を取り囲み、ふっと笑顔を浮かべたかと思うと、サトシは仲間の動きが止まったのを感じた。
彼の心拍数が上がり、恐怖禁断の扉が開かれた。
目の前で、ケンジがその光に触れようと手を伸ばした瞬間、光が彼を引き寄せた。

「ケンジ!」サトシの叫びが虚しく響く。
ケンジが光に飲み込まれ、瞬時に消えてしまった。
その様子を見た他の仲間たちも、恐れを抱えて一斉に逃げ出した。
しかし、どこへ逃げても光が彼らの視界に入り込み、次々と彼らを捕まえていった。

サトシだけが、震えながらその場に留まった。
目の前で何が起きているのか理解できず、恐怖に飲み込まれそうだった。
彼は光を見つめ、その中にある数多の影を見た。
それは消えた友人たちの顔だった。

「あなたたちの絆を試す時が来た」と、どこからともなく声が聞こえる。
それは神社に宿る霊たちの言葉だった。
光と影に囲まれたサトシは、仲間を助けることもできずただ眺めているしかなかった。

その瞬間、光が彼を包み込む。
彼は一度だけ友人たちの笑い声を思い出したが、すぐにその記憶は薄れていった。
サトシもまた、光の中へと消え、神社は再び静寂に包まれた。

数日後、町の人人は神社に入ることを恐れ、誰も近づかなくなった。
しかし、夜になればその光は消えずに灯り続け、静かに新たな犠牲者を待っているのだった。
恐れてはいけない、光の中に友人たちが眠っていると信じる者だけが、さらに恐れを抱くことになるのだ。

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