静かな夜、彼女は一人、ネの街を歩いていた。
彼女の名は狛、26歳。
生まれた場所を離れ、都会での生活を選んだが、時折、故郷を懐かしく思い出す。
特に、あの夕暮れ時の川沿いの景色は心に焼き付いていた。
しかし、選んだ道には様々な謎や影が待ち受けていた。
ある日、狛は懐かしさを感じる場所を訪れることにした。
故郷は自分の中で、何か特別なものとして大切に思われていた。
春の穏やかな陽気の中、彼女は故郷の小道を歩き、喧騒から遠ざかることで落ち着きを取り戻そうとした。
その夜、狛はふと思い出した。
かつて、自分が幼い頃に住んでいた村には「永遠の扉」と呼ばれる、古い神社があった。
その神社には数多くの言い伝えがあり、特に「突」という現象にまつわる話が怖い印象を彼女にもたらしていた。
それは、願い事が成就する代わりに、背後から誰かが永遠に視ているのだという。
どうしても確かめたくなり、狛はその神社に向かうことを決心した。
道中、周りの風景は次第に昔のクリアな記憶を蘇らせ、彼女の心を高揚させた。
しかし、神社に近づくにつれて、不気味な静寂が辺りを包み込む。
霞がかかった月明かりの中、神社はひっそりと佇んでいた。
境内に入ると、彼女の背後で微かに風が吹き抜ける音がした。
その音はまるで誰かがささやいているかのように思えた。
「狛、戻ってきたの?」と。
狛は一瞬立ち止まったが、振り返る勇気は出なかった。
彼女の脳裏に浮かんだのは、幼少期の記憶。
母が語ってくれた、「あの場所に行くと、永遠に憶(おぼ)えているものと出会う」という話だった。
恐れを振り払おうと決意した狛は、社の奥に進み、祠の前に立った。
「ここに、私の願いを込めます」と、心の中でつぶやいた。
彼女は目を閉じ、手を合わせた。
最初は何も感じなかったが、次第に冷たい風が彼女を包み込み、背筋が凍る感覚が走った。
突然、背後から突の現象が起こった。
何かが彼女に近づいてきている…!思わず振り返ると、何も見えない。
しかし、心の奥で感じる存在感は確かで、彼女は恐怖に襲われた。
「お願い、戻ってきて!」狛は叫んだ。
その瞬間、周囲の空気が重くなり、視界が揺らぎ始めた。
「抱いて、狛」と、かすかな声が耳元で聞こえた。
彼女は再び振り返ったが、闇の中には何もなかった。
しかし、視線を感じる。
背後に誰かが立っている。
狛は逃げたくなったが、足が動かない。
何かに掴まれたかのように、彼女の心は不安定で、思考は巡る。
「狛、お前は永遠に憶えているのか?」その声は、自分が忘れようとしていた過去の記憶に結びついていた。
狛は小さな頃の純粋さや、無邪気な笑顔の瞬間を思い出した。
その記憶はいつしか失われてしまい、彼女は本当にその答えを知りたいのか試される気がした。
「戻れ、戻れ」と唱えながら、恐怖を振り払い、彼女は神社を後にした。
はじめはゆっくりとした足取りだったが、気が付けば全力で逃げ出していた。
背後の声は次第に遠くなり、彼女はある瞬間、心の中の恐れが解放されたことを感じた。
夜明けが近づくと、彼女はようやくその場を離れ、故郷にあった智恵や愛の記憶を胸に抱いて生きていくことを決意した。