「永遠の影」

彼女の名前は江美(えみ)。
江美は小さな町の若い女性で、最近引っ越してきたばかりだった。
新しい生活に胸を弾ませていたが、町には一つの忌まわしい噂があった。
町の外れにある古びた神社の近くで、永遠に現れ続けるという怪異の話だ。

神社は、何十年も放置され、長い年月を掛けて朽ち果てつつあった。
町の人々はその場所を避け、近づくことすらなかった。
江美は最初は警戒していたが、興味が次第に勝っていき、ある夜、思い切って神社へ向かう決意をした。

その夜、風が冷たく、月明かりも薄かった。
江美は神社に足を踏み入れ、懐中電灯の明かりを頼りに奥へ進んだ。
神社の境内には、隙間だらけの古びた鳥居が立ち、周囲には木々が不気味にそびえていた。
神社の奥にある社殿は、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。

江美は、迷いながらも恐る恐るその社殿へと近づいた。
ドアは as、両サイドがひんやりとした空気をまとっていた。
その時、彼女の耳元に囁くような声が聞こえてきた。
「おいで、永遠に…」

その声に引き寄せられ、江美は社殿の中へ進んだ。
薄暗い室内には、古い神像が立っており、まるで江美を見つめているかのようだった。
戸惑いを感じるものの、彼女の心にはちょっとした期待感が芽生えていた。

その瞬間、江美は胸のあたりが冷たくなり、目の前に白い影が現れた。
それは、長い髪を持ち、白い着物を纏った女性の霊だった。
彼女は静かに江美を見つめ、「ら」っと目を細めて微笑んだ。
江美は恐怖を感じたが、その目にはどこか懐かしさを覚えた。

「美しい人よ、甘い夢を見つけに来たのね。」その女性は柔らかい声で囁いた。
「でも、そこには代償がある。」

江美は女性の言葉に惹かれ、物語が始まる予感を感じていた。
「私は、永遠を持っている。求めるならば、さあおいで。」

その言葉と共に、江美は惹きつけられるように、女性の方へと進んだ。
だが、神社の奥に進むにつれ、彼女の心の中に不安が押し寄せてきた。
その女性の目に映るのは、彼女自身の姿だけではなく、別の何かの存在も感じ取ったからだ。

「あなたは私の仲間になれる。永遠を共にしませんか?」

江美はその提案を一瞬考え込んだが、答えることができなかった。
「私には、まだやるべきことがある。」

すると、女性の表情は一瞬硬くなり、その瞬間、辺りが冷たくなった。
空気が変わり、周囲の景色が歪んで見える。
江美は背筋が凍りつく思いで、身を引いてその場を離れようとした。
しかし、彼女の足は地面に吸い寄せられるように動けなかった。

「あなたが去ってしまうなら、永遠は手に入らないわ。」女性は江美の逃げようとする姿を見つめ、嫉妬の色を浮かべた。

江美は恐れながらも必死に思い出そうとした。
彼女には大切な人たちがいること、そしてこの町での未来があることを。
それを胸に刻んだ瞬間、女性の声は耳元で響いた。
「なら、あなたを忘れはしない。永遠の代償を支払う日が来るはず。」

その瞬間、どこからともなく風が吹き荒れ、冷たい感覚が包み込んだ。
周囲の景色は一瞬にして変わり、気がつくと江美は町の道に立っていた。
神社は消え、一切の記憶が薄れていく感覚がした。

しかし、彼女の心の中には、何かが残っていた。
「あなたはまだ忘れないわ」と女性の声だけが、微かに耳の奥で鳴り響いていた。
江美は立ち尽くし、永遠の存在に足を踏み入れてしまったことを悟っていた。
彼女の道は、今後どこへ向かうのだろうか。

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