静かな山間に佇む小さな集落。
この村では、昔から「気」にまつわる不思議な話が語り継がれている。
村の入り口には、「永い気」と呼ばれる一風変わった木が立っている。
その木は、枝が空に向かって真っ直ぐ伸び、まるで天と地をつなぐかのような存在感を放っていた。
村人たちは、その木が持つ神秘的な力を信じていた。
主人公の誠一は、都市での生活に疲れ、心の癒しを求めてこの村にやってきた。
彼は自己探求の一環として、「永い気」を訪れることにした。
木の周りにはいつも静寂が漂い、誠一はその場所に自らを解放するように腰を下ろした。
「この気が、何か特別なものをもたらしてくれるかもしれない」と彼は思った。
その瞬間、まるで気を感じ取るように、木の葉がざわめき始める。
誠一は心を静め、その音に耳を傾けた。
すると、彼の内側に湧き上がるように強い力を感じた。
それはどこか懐かしさを伴い、同時に恐怖をもたらすものだった。
数日間、誠一はその木の下で瞑想を繰り返したが、心の奥にはいつも不安があった。
ある晩、彼は夢の中で不思議な少女に出会った。
その少女は長い黒髪を持ち、彼に向かって静かに微笑んでいた。
彼女は「私の気を感じて、何かを手に入れようとしているのね」とささやく。
誠一はその言葉に心を揺さぶられたが、同時に何かが彼を警告しているように感じた。
次の日、誠一は再び「永い気」のもとを訪れた。
しかし、木に近づくにつれて何かがおかしいと感じた。
木の葉がざわめき、風が強くなり、村全体が異常な静けさに包まれる。
誠一は心の中で不安を抱えつつも、木の影に身を任せた。
その夜、彼は再び少女の夢を見た。
今度は彼女の表情が険しくなり、「この気は永遠に続くけれど、汚れることもあるの」と告げた。
誠一は何を意味しているのか理解できず、ただ彼女の目を見つめた。
彼は彼女に惹かれながらも、どこか恐れを抱いていた。
次の晩、誠一は村の人々に彼の体験を語ったが、村人たちはその話を聞いて不安そうな表情を浮かべた。
特に、年配の男が重々しく語った。
「その気は、人を変える力を持っているが、受け入れる者には代償が伴う。永遠にそれを手に入れることはできないのだ」と。
その言葉に誠一は動揺し、彼の内面で葛藤が生まれた。
木の下での経験が彼を惹きつけながらも、彼自身の新しい存在を求めることが果たして正しいのか疑問が生じた。
彼は少女の微笑みの裏に潜む恐怖が徐々に影を落としているのではないかと感じるようになった。
数日後、誠一は再び「永い気」のもとを訪れ、木に手を当てた。
心の奥底で何かに呼ばれている気がした。
しかし、彼が木に触れた瞬間、彼は強烈な痛みを感じた。
まるで気が彼の内なるものと対峙しているようだった。
彼の意識は一瞬にしてさまざまな過去の記憶に引き寄せられ、彼は自分自身が何を求めていたのかを見つめることになった。
最後に彼は目覚め、村に戻った。
彼の心には強い決意が生まれ、「この気が持つ永遠さを理解した」と感じていた。
しかし、彼はその気を手に入れることができなかった。
少女の顔も、彼の記憶から消えていく。
不安と恐怖の中で彼は、ただ村の静寂を受け入れるしかなかった。
永遠に続く「気」の力は、彼にとっての試練であったことを理解することができたのだ。
