静かな田舎町には、不思議な伝説があった。
町の中心にある古びた神社では、「目が止まる」という現象が報告されていた。
人々はその神社に近づくことを避け、訪れる者は皆、恐怖に囚われてしまうという。
ある夜、大学に通う20歳の佐藤健太は、友人たちの噂を耳にした。
「神社の奥には不気味な印があるらしい。目を合わすと、永遠にその場から動けなくなるんだって」と。
好奇心が勝った健太は、祭りの夜に神社を訪れることを決意した。
月明かりに照らされた神社の境内は、ひっそりとしていて eerie な雰囲気が漂っていた。
健太は社の前で立ち止まり、深呼吸をした。
「所詮、ただの迷信だ」と自分に言い聞かせながら、奥へと進んでいく。
境内の奥にある本殿へと向かう途中、健太の目に飛び込んできたのは、古い木の壁に刻まれた不気味な印だった。
そこには、目をかたどったような形状があり、周囲には呪文のような文字が書かれていた。
彼は思わず立ち止まり、その印をじっと見つめた。
次の瞬間、視界が歪んだ。
まるで印が動き出したかのように、彼の目の前で光り輝いて見えた。
驚きと恐怖に襲われつつ、健太は意識が遠のいていくのを感じた。
「目を見てはいけない…」心のどこかで警告が鳴ったが、身体は言うことを聞かない。
幼いころからの好奇心が、彼をその場に捉えた。
ふと気がつくと、彼の周りの空気が重くなり、周囲の景色が変わり始めた。
まるで、彼を神社の奥へ、さらなる深淵へと引き込むかのように。
彼の目は印に瞬きもせず、視線を逸らすことが許されなかった。
印は彼の心に潜り込み、何かを囁いているようだった。
「逃げられない…」その声は、彼の内なる声ではなかった。
何者かが彼の心に入り込み、彼自身を操っているような感覚がした。
健太は混乱しながらも、本殿の奥へと歩き始めた。
本殿の扉を開けると、そこには千本の目が彼を見つめていた。
無数の目が、まるで彼を捕らえようとするかのように。
そして、その真ん中には大きな石像が鎮座していた。
目を引くその石像には、町の人々が忘れ去った過去の霊たちの姿が彫り込まれていた。
印と同じ目を持つ彼らの視線が、健太に向けられていた。
「お前も私たちと同じ運命を辿るのか…」誰かの声が響き渡る。
恐怖で心臓が高鳴り、彼は体が動かなくなった。
彼は今、目に捉えられたのだ。
その瞬間、彼の目に映る全てが暗闇に飲み込まれ、彼は呪縛されたように止まってしまった。
周囲の声がざわめき、彼の意識は徐々に薄れていく。
目が止められ、身体も心も自由を失った健太は、もう戻ることはできなかった。
彼はこの世の存在ではなくなり、目を持った印の一部として、永遠にその場に留まる運命が決まったのだった。
それから一夜に、一人また一人と新たに神社を訪れる者たちが現れる。
その旅人もまた、いつしか目に捕らえられ、同様の運命を辿ることになる。
彼の姿は町の人々から忘れ去られ、神社は再び静寂に包まれていく。