ある静かな村に、浩司という若者が住んでいた。
浩司は小さい頃からこの村で育ち、家族や友人に囲まれて幸せな日々を送っていた。
しかし、彼は選択の自由を求め、将来を決めることに悩んでいた。
彼は東京の大学への進学が決まっていたが、故郷を離れることに不安を抱いていた。
ある晩、浩司は村の古い神社へと足を運んだ。
神社は村の中心に位置しており、長い間人々に大切にされてきた場所である。
神社の前には大きな木がそびえ立ち、その木には数世代にわたる願い事が刻まれた小さな板が掛けられていた。
浩司はその木に触れ、心の中で願いを込めた。
「私はどちらに進むべきか、教えてほしい。」
その瞬間、木の向こうから不気味な風が吹き、浩司の心がざわざわし始めた。
彼は目を閉じ、しばらくその感覚に身を任せていた。
ふと、目を開けると、目の前には彼の記憶の中の友人たちが現れていた。
彼らは無邪気に笑い、楽しそうに遊んでいる。
しかし、彼らの顔はどこか冷たく、不気味な影が漂っていた。
「浩司、来て！一緒に遊ぼう！」と、友人のひとりが手を振った。
その瞬間、浩司は恐怖を感じた。
彼はこの子たちが、過去の思い出の中から生まれた幻影であることに気がついた。
しかし、友人たちはさらに大きな声で呼びかけ、「棄てられた思いを感じて、私たちと遊ぼう！」と言った。
浩司は戸惑いながらも、その場を離れることができなかった。
「なぜこんなことが…」と思いながら、彼は不思議な魅力に引き込まれていった。
声が無限に響き続け、彼は心の中の葛藤と向き合うことになった。
彼は自分の選択、つまり東京へ行くことが、本当に間違ったことだったのかと問いかけた。
友人たちは目の前で無邪気に遊んでいたが、自分の生活、夢、未来に対する不安は、彼らの存在によって強調されていく。
そして浩司は理解した。
過去を棄てることは、こうして記憶の中から彼を呼び戻す友人たちを永遠に失うことになるのだと。
ひときわ大きな叫び声が響き渡り、幻影たちは彼に迫ってきた。
「逃げないで！私たちを棄ててはいけない！」その瞬間、浩司の目の前が真っ暗になり、彼は恐怖に押しつぶされそうになった。
これが「棄」と「愛」というテーマの狭間で彼が直面した試練なのだと、彼は悟った。
恐怖に震えながらも、浩司は大きく息を吸い込み、心の中で決意した。
「私はこれを棄てることはできない。あなたたちも、私の心の中にいる。けれども、私の未来には進まなければならない。」彼のその思いが周りに響き渡った瞬間、神社の幻想が弾けるように消えていった。
次の瞬間、浩司は元の神社の前に立っていた。
夜空には美しい星が瞬いており、彼の心にはまだ友人たちの笑顔が残っていた。
しかし、彼は前に進むことができるということを理解した。
過去の思い出が彼を縛ることはない。
その思いを胸に、自分の未来を切り開いていく勇気を持つことが大切なのだと。
浩司はもう一度神社を振り返り、心の中で友人たちに手を振った。
「ありがとう、さようなら。」彼は新たな決意を胸に、ゆっくりと神社を後にした。
