秋が深まり、夕暮れ時になると、辺りはにわかに薄暗くなる。
町の外れに立つ古びた公園には、一本の大きな木があった。
この木は地域のシンボルであり、子供たちの遊び場でもあった。
だが、ある夏の日を境に、その木が陰のある存在になってしまったのだ。
公園には小さな女の子・美咲が住んでいた。
彼女は毎日のようにその公園で遊んでいたが、ある日、友達のあきらがふざけて言った。
「あの木には亡くなった子供の霊が住んでるんだって。近づくと、跡が残るんだよ。」その言葉が美咲の心にざわめきを引き起こした。
夜、家に帰った美咲は、あきらの言葉を思い出しながら不安に包まれた。
「木に近づくと、何か起こるのかな？」その夜、美咲は夢の中であの木と出会った。
木は彼女に向かって、哀しげな声で呼びかけてきた。
「おいで、私と遊ぼう…。」
翌日、好奇心に駆られた美咲は公園に向かう。
周りの子供たちが木を避ける中、彼女だけはその木に近づいた。
すると、急に風が吹き上がり、葉がざわめく音がした。
美咲はためらいつつも、木の側に立ち、じっとその姿を見上げた。
突然、木の幹に小さな手の跡が現れた。
「これは…誰かが触れた跡？」美咲は思った。
日が暮れるにつれ、公園は静まり返った。
美咲は友達を呼び寄せ、手の跡を見せたが、誰もが異様な恐怖におののいた。
「やっぱり…あの木はおかしいんだ。」美咲は仲間たちと一緒に逃げ帰った。
数日後、公園で遊んでいると、美咲の目に異変が映った。
木の周りには人だかりができていた。
近づくと、そこには他の友達の姿もあった。
彼らは「また手の跡が出た！」と興奮しながら話していた。
でも美咲は不安を抱えていた。
「これ以上、木と関わったら…」
その晩、はっきりとした夢を見た。
木が言った。
「一緒に遊びたい…ここに来て、友達を連れてきて。」彼女はその声に魅了され、次の日、友人たちを誘って公園に戻った。
しかし、子供たちの姿は次第に減り、いつの間にか美咲だけが残ることになった。
時が経つにつれ、美咲はその手の跡が何かに呼ばれているように感じ始めた。
その夜、不思議な夢を見た。
彼女は夢の中で木の前に立っていた。
その瞬間、周囲には無数の手の跡が浮かび上がった。
「私の友達になって…」その声は生々しく、そして冷たい。
夢の中で振り返ると、背後には数えきれないほどの子供たちがいた。
ついに恐怖に耐えられなくなった美咲は木から離れ、二度と近づかないことを心に決めた。
その後、公園には誰も近寄らなくなり、木も静かに佇むだけになった。
痕跡は消えてしまったが、木が秘めた闇は決して忘れられるものではなかった。
それから数年の月日が流れた。
美咲は成長し、町から離れていったが、時折夜を迎えると、その公園の光景が夢に蘇ることがあった。
あの木の姿、手の跡、そして呼びかける声。
心のどこかで、何かが彼女を待っているような気がした。
あの場所には、いつまでも亡くなった子供たちの遊び場が存在し続けるのだ。
彼らは、消えたはずの美咲を呼び、今も遊び続けているのかもしれない。
