「望みの終わり」

修は、古びた神社の近くに住む普通の大学生だった。
ある日、彼は友人たちとともに肝試しを計画し、特に神社の神像にまつわる噂を耳にすることになった。
「あの神像、触ったら最後だって。望みをかけると、必ず何かが終わるんだってさ。」友人の弘樹が言った。

興味をそそられた修は、友人たちとともに神社に向かうことにした。
月明かりの下、神社は静まり返り、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
拝殿の裏手にある神像に近づくにつれ、修はなぜか気分が重くなるように感じた。

「本当に願いがかなうのかな?」友人の真紀がつぶやく。
「いや、逆に何か恐ろしいことが起こりそうだ。」修は心の中で不安を抱えながらも、その場に立ち尽くしていた。
神像は石でできており、まるで冷たい気を放っているようだった。

修は友人たちに促されて神像に近づく。
彼は心の中で望みをかけることにした。
それは、自分の成績が向上し、就職が決まるという願いだった。
目を閉じ、心の中で自分の想いを封じ込めるように祈った。

しかし、その瞬間、神像がかすかに震えた。
修は驚いて目を開けると、神像の目がわずかに光を放っていることに気づいた。
恐怖心が彼を襲い、瞬時に友人たちを振り返る。
「何かおかしくないか?」真紀が不安そうに言った。
弘樹は「早く帰ろう。もう遅いし、ここには何もないんだ。」と、後退り始めた。

だが、修はその場から動けなかった。
何かが頭の中でぐるぐると回り、封じ込めたはずの願いが暴れ出すような感覚に襲われた。
すると、神像の口がわずかに開き、低い声が響いた。
「望をかけた者は、終わりを迎える。」

その言葉に、一瞬体が凍りついた。
修はどうにかその場を離れ、友人たちとともに神社を後にした。
しかし、帰り道、修の胸には妙な重苦しい気が残っていた。
願い事は果たされたのだろうか、それとも何か悪いものを引き寄せてしまったのか。
帰宅すると、彼の心に不安が渦巻いていた。

数日後、修は成績表を手にした。
思っていた以上に成績が上がっていたのだ。
夢がかなったと思ったが、その一方で何かが終わった気がした。
友人たちに報告すると、彼らは喜んでくれたが、修自身は心が晴れなかった。

その後も修は神社のことを思い出し、恐る恐る訪れた。
すると、神社は以前とは違い、不気味な雰囲気が漂っていた。
あの日、神像があの言葉を放った瞬間から、周囲の空気が変わった気がした。

神社には誰もいない。
修は神像の前に立ち、また心の中で願い事を考える。
しかし、恐怖心から心の中で望みを明言することができなかった。
「もしかして、願いをかけてはいけないのか?」

その直後、背後で葉音が響いた。
振り返った修は、友人の弘樹と真紀の姿を見たが、彼らの表情は心なしか暗かった。
「どうした?元気ないな。」弘樹が言うが、修は意味もなく彼を見つめ返した。
「何か終わってしまった気がする、平和が。」そう言った瞬間、弘樹も真紀も無言になった。

やがて、修たちはその場を離れ、日常生活に戻った。
しかし、夢の中にはいつも神社の神像が影を落としていた。
彼が願いをかけたことは悔いに変わり、やがて彼の心には恐怖の記憶だけが残った。
彼は気づく。
自分が望んだものには、必ず何かが封じ込められている。
しかし、その「何か」は一度解かれると、終わりを告げるものになるのだと。

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