彼女の名前は真理子。
彼女は都会から少し離れた田舎町に住んでいた。
周囲は緑に囲まれ、自然に満ちた環境が彼女の心を癒してくれた。
ただ、町に住む人々は一つの共通した恐怖を抱えていた。
それは「縛」という古い伝説だ。
その伝説によれば、満月の夜、特定の場所に行くと、霊が出現し、人を「縛る」ことがあると言われていた。
縛られた者は、二度と元の世界には戻れないという。
真理子はそんな話を信じてはいなかったが、町の人々の怯えた顔を見るにつれ、心のどこかで不安を抱いていた。
ある晩、真理子は友人たちと一緒に自然の中を散策することにした。
彼女たちの中には、その伝説を信じている者も多く、「ここでは十分気をつけなきゃ」と言いながら、少しばかり恐怖心を煽るような話をしていた。
真理子はそんな友人たちを見て、内心「単なる迷信だ」と思いつつも、心がざわつくのを感じていた。
夜が深まるにつれ、真理子たちは満月の光に照らされた古い神社にたどり着いた。
神社はひと気がなく、 eerieな雰囲気が漂っていた。
友人たちはそこで遊ぼうと言い始めたが、真理子は「ここに長くいるのは良くない」とみんなに警告した。
友人たちは笑って「何も起こらないよ」と言うが、真理子の心の奥には不安が広がっていた。
神社の奥に進むと、真理子の目の前に突如として「縛」の印を持つ木が現れた。
その木は周りの自然から浮いているかのようにだけ感じられ、聞こえるのは虫の声とともに鳴る不気味な風の音だけだった。
「これは…」と思った瞬間、突風が吹きぬけ、彼女の周りの景色が変わった。
友人たちの姿があわただしく消え、彼女は一人だけがその場に残されていた。
恐怖に駆られた真理子は、叫び声を上げた。
「友達、どこにいるの?」すると、草木の間から聞こえてくる声があった。
「真理子、もう戻れないよ。」
その声は友人たちの声に似ていたが、どこか不気味で冷たい。
真理子は必死にその声を無視し、周囲を見回した。
しかし、どんなに探しても彼女は友人たちを見つけることができなかった。
すでに彼女はその場所に「縛られて」しまったのだと悟った瞬間、彼女は膝をついて涙を流した。
「助けて…戻りたい…」
その時、月の光が強くなり、不思議な感覚が真理子を包み込んだ。
彼女は心の中で、友人たちと遊んだ楽しい思い出を必死に思い出そうとした。
暗闇を照らすために、楽しかった日々を一つ一つ思い起こし、彼女は心の中で彼女たちを呼び続けた。
すると、どこからかかすかな音が聞こえた。
「真理子、私たちはここにいるよ。」その声が響くとともに、彼女の意識が少しずつ明るくなっていった。
意識を回復させようとしたとき、恐怖の感覚が徐々に薄れていくのを感じた。
真理子は全力で立ち上がり、その場から逃げるように走り出した。
森林を抜け、月明かりの下で道に出たところで、ようやく周囲の景色が戻ってきた。
彼女は全力で走り続け、やっとの思いで家にたどり着いた。
だが、彼女の心には消えない不安が根を下ろしていた。
あの恐ろしい「縛」の印が、いつか彼女を再び引き寄せるのではないかと、心に大きな重荷を抱えながら、彼女は日々を過ごすことになった。
彼女の大切な友人たちの姿が、いつまでも彼女の中で消えずに残ることを、彼女はひしひしと感じながら。