間はその夜、静まり返った街の公園で一人、ベンチに座っていた。
周囲は暗く、不気味な気配が漂っていた。
彼は、最近体験した奇妙な現象について考えていた。
それは、時が歪む感覚。
まるで過去と未来が交錯するような感覚だった。
その体験が始まったのは、数週間前のことだった。
ある日、間は古本屋で一本の本を見つけた。
その表紙は薄汚れていたが、タイトルには「時の迷い道」と書かれていた。
好奇心に駆られた彼は、その本を購入し、帰宅後すぐに読み始めた。
物語は不思議で、過去の出来事と未来の出来事が交わりながら展開されていく内容だった。
読んでいるうちに、次第に間はその物語に引き込まれていった。
しかし、その夜以降、間は変な夢を見るようになった。
夢の中で彼は、自分が幼い頃に戻り、忘れかけていた場面を見ることができた。
それは、母親と遊んでいた幸せな日々だった。
でも、夢が進むにつれて、彼は急に一年後の未来に飛ばされてしまった。
そこでの彼は、自分が大切にしていた友人と再会を果たす場面を目撃するが、友人の表情はどこか暗いものだった。
その夢が何度も繰り返されるうちに、間は現実と夢の境界が曖昧になり始めていた。
何かが自分を見つめている感覚、時が歪んでいるような感覚に囚われていた。
そして次第に、彼はその異様な感覚を解明したいと思うようになった。
ある晩、夢の中で出会った友人、佐藤が言った。
「この夢は、未来を知るための道標だ。君が選択をすることで、過去も未来も変わるんだ。」その言葉に驚かされた間は、目が覚めた後に深く考え込んだ。
彼が一歩を踏み出すごとに、選択の結果が時に影響を与えるということを意味していた。
それから間は、現実世界でも異変を感じ始めた。
自分がいる場所が、どこか不自然で時間がゆっくりと進んでいるように思えた。
例えば、学校の廊下で同級生とすれ違うたびに、彼らの会話が過去のものであったり、未来の出来事について話していたりした。
そして、間自身も何気なく未来の出来事を口に出してしまったことに気付く。
時間を制御することの恐ろしさを実感した間は、自分の選択がどんな影響をもたらすか怖れ始めた。
彼は本を再度読み返し、登場人物たちがどのようにして運命を変えたのかを知ろうとした。
間は次第に、過去の選択を悔い、未来への恐怖に押しつぶされそうになった。
そしてある日、間は再び公園で夢見た佐藤と再会することを選択する決意を固めた。
彼女の反応が未来を変えるのなら、友人との絆を大切にするべきだと考えた。
公園で佐藤と向かい合うと、間は心の内を言葉にした。
「未来がどうなるかはわからないけど、君のことを忘れない。だから、今を大切にしよう。」
その瞬間、不思議な感覚が彼を包んだ。
時がまたひとつ進み、彼の周りの景色が明るく変わっていった。
間は選択がもたらす重みを実感し、未来のことを考えすぎるのではなく、今この瞬間を生きることの大切さに気付いた。
そして、彼の心には、友人との絆がしっかりと結びついていた。
不気味な公園での出来事を経て、彼は未来を恐れることなく受け入れることができた。
それ以来、間は自分の思考を大事にし、過去や未来に溺れることなく、地に足をつけた生き方を選んでいった。
時の迷い道に惑わされることもなく、彼は自らの選択を胸に、人生の道を進んでいったのだった。