ある地方の静かな町に、古びた学校があった。
そこは創立以来、数十年が経ち、何度も改修を重ねているものの、どこか陰鬱な雰囲気が漂っていた。
この学校には、卒業生たちの間で語り継がれる恐ろしい噂があった。
その噂の発端は、ある一人の学生にまつわるものである。
彼の名前は健二。
彼は内向的であまり目立たないタイプの生徒だったが、学業は優秀で、特に数学が得意だった。
ある日の放課後、彼は質問をするために教室に残ることにした。
周囲には誰もいなくなり、学校の廊下には静けさが漂っていた。
しかし、彼が教室で教えを乞うている最中、不意に教室の窓がカタカタと音を立てた。
風もないのに、窓が揺れている。
警戒しながらも無視することにした健二だったが、その現象は次第に気味が悪くなっていった。
視線を感じるような、不気味な感覚が彼を襲った。
その後、教室の明かりがフッと消え、暗闇に包まれた。
恐怖心から一瞬硬直し、何とか勇気を振り絞って明かりをつけようとした瞬間、背後から低い声が聞こえてきた。
「助けて…」。
その声は女の子のものだった。
ゾッとした健二が後ろを振り向くと、驚くことに、そこには見知らぬ少女が立っていた。
彼女は薄汚れたセーラー服を着ていて、目は虚ろだった。
「私を…助けて…。」少女は再び言葉を発したが、彼女の口元からは血が滴り落ちていた。
健二は恐怖で固まってしまい、少女の話を聞こうとするどころか、逃げ出そうと試みた。
しかし、足が動かない。
彼は必死にその瞬間を耐え抜いた。
時が経つにつれ、少女の姿は消え、その後何事もなかったかのように教室の明かりが戻った。
気がつくと、健二は一人だけ教室に取り残されていた。
後日、学校に戻ることができなかった健二は、次第にその出来事を思い出すことができなくなり、普通の学生生活を送っていた。
しかし、学校生活が進むにつれ、彼の周囲には何度も不思議な現象が起こるようになった。
身の回りの物が勝手に動いたり、誰もいないはずの場所から話し声が聞こえたりした。
それでも人々はその話を笑い飛ばし、健二も自分自身を信じようと必死であった。
月日が流れ、健二は高校を卒業することになった。
しかし、卒業式の日、教壇に立っている校長が突然倒れた。
搬送先の病院で校長は、「例の少女が現れた」と言ったという噂が広まった。
そして、その噂を聞いた卒業生たちは、怖くて学校に戻れなくなった。
それから数年後、久しぶりに母校を訪れた健二は、廊下を歩いていると、かすかに少女の声が聞こえてきた。
「助けて…」。
その声に引き寄せられるように氷のように冷たく、どこか不気味な空気を感じながら、彼は再びその教室に向かうのだった。
果たして、彼はあの少女を救えるのだろうか。
それとも、彼自身が少女の悲劇に飲み込まれてしまうのか、答えは風の中に消えていった。
