秋が深まり、枯れ葉が舞い散る季節、安藤智樹は以前から気になっていた廃墟、古びた洋館に足を踏み入れた。
近所の人々はその場所を恐れ、近づくことさえ滅多にないという。
そこには数十年前、若い夫婦とその幼い息子が住んでいたとされるが、突如として姿を消したという噂が立っていた。
智樹はその話に興味を抱き、自らの好奇心と共にその場に向かっていた。
廃墟の入り口は錆びた鉄製の扉で、智樹が力を入れて押すと、ギシギシと音を立てて開いた。
中は暗く冷たい空気が漂っていた。
壁は落ちかけた絵画や、埃で覆われた家具が散乱しており、どこか不気味な雰囲気がただよっていた。
彼は懐中電灯を取り出し、周囲を照らしながら奥へ進んだ。
しかし、部屋に入った瞬間、智樹は何かの視線を感じた。
その瞬間、身体が硬直し、背後から冷たい風が吹き抜けた。
振り返ると、誰もいないはずの空間の奥から微かな声が聞こえてきた。
「助けて…戻ってきて…」
智樹はその声に引き寄せられ、さらに奥へと進んだ。
小道を進むと、木のドアの前に立ち止まった。
ドアを開けると、そこにはかつてこの家に住んでいたという夫婦の姿が浮かび上がった。
彼らは顔を曇らせ、必死に何かを訴えるように智樹を見つめていた。
しかしその目は虚ろで、まるで何かに囚われているかのようだった。
智樹は恐怖を感じながらも、目の前の夫婦に尋ねた。
「あなたたちは…何があったのですか？」すると、夫婦は一斉に口を開く。
「暴力に…襲われた…戻りたくても戻れない…我が子も…」
彼の思考は混乱し、何か自分が引き寄せられているかのように思えた。
智樹の中で不安が渦巻いていたが、彼はもう声をかけることすらできなかった。
さらに進むと、無数の写真が壁に貼られていた。
その中には、この洋館に住んでいた家族の肖像写真もあれば、朽ち果てた場所でさまよう不気味な影もあった。
恐ろしさに耐え切れず、智樹は逃げ出そうとしたが、廃墟の構造が変わったかのように感じられ、出口が見えなかった。
ふと、冷たい手が彼の腕を掴んだ。
恐怖で振り返ると、そこには幼い息子の姿があった。
彼の目は無表情で、智樹をじっと見つめている。
「かあさん、とうさんを…ねえ、早く…」その一言に智樹の心はざわついた。
気づけば、彼はこの家に引き寄せられ、いつの間にか、何か不吉な運命に縛られていた。
過去の亡霊たちが自分を求めている。
智樹は思わず叫んだ。
「私は戻れない！」
その瞬間、彼の心に
