静かな村の奥にひっそりと佇む神社。
そこには、古くから受け継がれてきた「験」という呪いにまつわる伝説があった。
村人たちは、この神社には近づかないように教えられており、その存在を忘れかけていた。
しかし、最近村に引っ越してきた青年、佐藤直樹は、この神社の伝説に興味を持ち、その実態を確かめることを決意した。
ある晩、彼は神社へ向かうことにした。
薄暗い森を抜け、月明かりの下で神社が迎えてくれた。
異様な静けさに包まれた神社は、まるで誰も存在しないかのように感じられた。
直樹は勇気を振り絞り、神社の本殿へと足を踏み入れた。
本殿の中には、古びた祭壇があり、その上には無数の札が並べられていた。
それらの札には、神社に訪れた者たちの名前と共に、彼らが掛けられた「験」の内容が記されていた。
直樹はその一つ一つを読み進め、次第に自分自身にも何らかの験がかけられるのではないかという不安に苛まれていった。
祭壇を調べていると、ふいに背後から冷たい風が吹き抜けた。
直樹は振り返ると、そこには一人の女性の霊的存在が立っていた。
彼女の名は中村美咲。
かつてこの村に住んでいたが、験のために命を落としたという伝説があった。
美咲は直樹を不敵な笑みで見つめていた。
「アナタも私のようになりたいの？」美咲の声は耳元で囁くように響いた。
直樹は心の中に恐れを抱きつつも、恐怖に打ち勝つようにして言った。
「待ってくれ、君のことを知りたい。どうしてこんなことになったのかを教えてほしい。」
美咲は静かに笑い、直樹の目の前に近づいた。
「村の者たちが私を呪ったの。彼らは私が特異な力を持っていると恐れていた。だから、験をかけられてしまったのよ。」直樹はその言葉に驚愕し、恐ろしい現象に直面することになるとは思わなかった。
彼女は続けた。
「私の命を奪ったのは、私が持っていた秘めた力。無限の可能性を秘めながら、村人たちは私のことを恐れ、呪いをかけた。彼らは私を消し去ることで、自らの恐れを消そうとしたの。」直樹はその衝撃的な物語に耳を傾けながら、彼女の言葉が真実であることを理解した。
その瞬間、直樹の体が一瞬凍りついた。
何かが彼の心に宿り始め、その力を解放しようとするかのように。
しかし、それはひどく危険なものだった。
直樹はその力に引き寄せられ、恐ろしい運命を背負うことになるのではないかという考えに苛まれる。
「もしあなたが私と同じ道を歩むことを選んだなら、あなたも呪われることになるわ。」美咲の目は、直樹の心を見透かすかのように冷たかった。
直樹は戦慄した。
これ以上この神社にいることはできない。
彼は逃げなければならなかった。
「私はこんな運命は嫌だ！」直樹は叫び、神社を飛び出して森の中へと走り出た。
月明かりの下、彼は背後から迫る恐怖を振り切るかのように必死に足を速めた。
だが、逃げるほどに美咲の笑い声が響き渡り、彼の心に呪いがかけられたように思えた。
「あなたは私を忘れられない。一緒にいる限り、私はあなたと共にいるから。」その言葉が、彼の心に深く刻まれていた。
直樹は家に戻り、自分の中に潜む恐れが消えないのを感じていた。
彼はもう二度とあの神社に近づくことはできないと決意した。
しかし、彼の心には美咲の存在が影を落とし、呪いを解く術を求める旅が始まるのだった。
