「忘れ去られた書の会」

山田は、小さな町に住む普通の学生だった。
彼には一つの趣味があり、それは古い本を集めることだった。
ある日、彼は町の古本屋で薄暗い隅に置かれている一冊の書を見つけた。
その表紙はぼろぼろで、タイトルはかすれて読めなかったが、彼の好奇心をそそったため、すぐに購入することにした。

家に帰り、山田はその書を開いてみた。
ページをめくるたび、異様な感覚に襲われた。
文字は古い漢字で書かれており、意味を理解するのが難しかったが、いくつかの文章は読み取ることができた。
それは「会」というテーマで、特定の儀式を行うことで他の世界と繋がることができると書かれていた。
山田は興味を持ち、手がかりを求めてページをめくり続けた。

書の内容に引き込まれ、彼は次第におかしな夢を見るようになった。
夢の中で、彼は何人もの人と会う。
見知らぬ顔ばかりで、彼がこの世の中で一度も会ったことのない者たちだった。
彼の夢の中では、彼らはまるで長い間再会を果たしていたように喋り続け、山田は何を話しているのかわからなかったが、彼はどこか懐かしさを感じていた。

ある晩、夢を見ることができないほど疲れ切った山田は、書の儀式に挑戦することを決めた。
ページをよく読み、自分がどうすればその「会」に参加できるのかを理解しようとした。
数日の間、彼は儀式に必要な道具を集めた。
ここで提示された複雑な呪文を正確に唱えるため、彼は何度も練習を重ねた。

ついに彼は準備を整え、真夜中に儀式を始めた。
静かな書斎の空間には不気味な雰囲気が漂い、彼の心拍数は高まった。
彼は厳かな声で呪文を唱え、火を灯し、書に記された通りに指示を実行していった。
周囲の温度が急に下がり、寒さが彼の背筋を直撃した。
その瞬間、目の前の本のページが瞬きを始めた。

そして、書の中から青白い煙が立ち上がり、次第にかすかな人影が浮かび上がった。
山田は驚きのあまり言葉を失った。
そこに現れたのは、まさに夢の中で見た人たちだった。
彼らは自分の名前を名乗り始め、山田に向かって囁くように話しかけた。

その時、彼ははっきりとした意識で思い出した。
夢の中で感じた懐かしさは、彼らが彼の先祖であることから来ていたのだ。
彼は過去に生きた自分のご先祖様と会っているのだと気づいた。
しかし、会話が進むにつれ、山田は次第に恐怖を感じ始めた。
彼らは言葉を交わすうちに、彼に向けて何かを求め始めたのだ。

「私たちに加わってほしい」「あなたも私たちと同じ道を歩むべきだ」と、一斉に言った彼らの声は同じように聞こえた。
彼は思わず後退り、抵抗しようとしたが、体は動かなかった。
過去に関与した者たちの暗い欲望に囚われそうになる自分がいた。

「違う、こんなことは嫌だ!」山田は心の中で叫んだ。
彼は急いで呪文を逆に唱え、書を閉じようとした。
しかし、すでに彼はその場から離れることができない状態に陥っていた。
周囲の空気が濃くなり、彼は絶望的な状況を感じ取った。

何が起こったのか理解できないまま、次の瞬間、青白い煙は彼を包み込み、目の前の景色が歪む。
山田はそのまま意識を失った。

気がつくと、いつの間にか彼は膨大な書の前に座っていた。
現実なのか夢なのか、その境界がわからないまま、彼はただの学生ではなく、二度と戻れない場所に閉じ込められていた。
彼の名前は、過去の者たちと同様に、永遠に忘れ去られ、書に幽閉されてしまった。

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