ある秋の晩、清一は友人たちと共に空き家となった旧校舎に肝試しに出かけた。
初めての夜の探検に心躍らせていたが、彼の心の奥にはある不安がよぎっていた。
この校舎は、数十年前に火事で焼失し、多くの学生がそこで命を落としたという噂が立っていたのだった。
懐中電灯の明かりが暗い廊下を照らすと、長いこと放置された校舎の埃や朽ちた机、椅子が悲しげに彼らを迎えた。
清一は、火事が起きたという大教室に足を踏み入れた。
そこには、壁に掲げられた黒板と古びた机が残っており、まるで過去の学生たちが未だにここにいるかのように感じられた。
「この教室で何かが起きたんだろうな」と、友人の進一が言った。
清一は頷き、同時に戦争の影が晦日したこの地に、何かしらの贖いの必要性を感じていた。
その時、背後で何かが放たれたかのような音がした。
振り返ると、彼らが入ってきた doorway から風が吹き込み、あまりにも冷たい気配を感じた。
清一はぞっとし、仲間を見回したが、彼らも同様に不安な表情を浮かべた。
「もしかして、ここにいるのか？」と清一は心の中で呟いた。
彼は自分の思考を抑え、暗い教室を再び照らし直した。
時は流れ、彼らは旧校舎の中での様々な現象に遭遇する。
その中の一つ、教室の中の机の引き出しが勝手に開き、中から一通の手紙が取り出された。
進一がそれを読み上げると、内容はかつてこの場所で学び、失われた学生たちが贖いを求める声だった。
「私たちを忘れないで」との言葉と共に、切々とした叫びが込められていた。
その瞬間、清一は何かが彼の心に迫ってくるのを感じた。
学生たちの思いがその場に集まり、彼らの苦しみや無念がすぐ隣にいるように感じたのだ。
その場にいることで、自分たちの楽しみのためにこの場所に来てしまったことを、清一は後悔し始めた。
友人たちも同じ思いを抱いていたのだろう、全員が一瞬、言葉を失っていた。
「このままだと……どうなるんだろう？」と言ったのは美香だった。
彼女の言葉が再び廊下を静寂で満たす。
その瞬間、足音が響くのを聞いた。
誰のものか分からないその音は徐々に近づき、清一たちは恐れで身動きできなくなった。
続けて、視界の隅に薄明かりが現れた。
それは火の気を帯びた、まるで戦いの悲劇を象徴するかのような炎が、一瞬遅れて彼らの視界に入ってきた。
周囲の乾いたものが、一斉にガラガラと音を立てて崩れていくのを彼らは目撃した。
「逃げよう！」と清一が叫ぶと、全員はその場から飛び出した。
だが出口を目指す道すがら、彼らは何度も振り向き、火の影が追いかけてくるのを確認した。
ただの肝試しが、彼らの心を贖う戦いへと変わった。
夜の静寂の中で生きた証を感じ、彼らはその彼方に存在する学生たちと戦うように逃げ続ける。
無事に校舎の外にたどり着いた時、清一は振り返ってその校舎を見つめた。
古びた校舎は、今でも彼らの心の中で生き続けていた。
火事の跡はもうなく、その校舎がもたらした贖いの思いは、深い心に刻まれていた。
清一たちは今後、彼らの命がどのように失われたのか、この場所での出来事を決して忘れないだろう。
心に宿る痛みと共に、誓いを立ててその場を後にした。
