「忘れ去られたレストランの悲劇」

霊の間は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。
古びたレストランの一角、今は忘れ去られたかのように廃墟と化したその場所には、長い間誰も訪れることはなかった。
しかし、そのレストランには、訪れた者だけが知る恐ろしい秘密が隠されていた。

ある晩、友人たちと心霊スポット巡りを楽しむために、大学生の佐藤はそのレストランを訪れることにした。
「こんなの、ただの噂だろ?」彼は他の友人に笑いながら言った。
友人の中には、賢い考えを持つ田中と、好奇心旺盛な鈴木がいた。

「でも、念のためにあまり近づかないようにしようよ」と田中が提案した。
しかし、鈴木はどうしてもその場所に行きたがっていた。
「だって、出るかもしれないじゃん!」と彼は期待に輝く目で言った。

佐藤は友人たちと共にレストランの外観を眺め、その朽ち果てた姿に興味をそそられた。
夜風が吹き抜ける中、何か不気味な感覚が彼らを包み込む。
このような場所で何が起こるのか、彼らはわくわくと恐怖を混ぜ合わせた感情で進んでいった。

店内に踏み入ると、静寂が二人を迎えた。
壁にはかつての美しい装飾が残ってはいるものの、今はすっかり色あせ、埃が被っていた。
途中、古びたカーテンの間から薄明かりが漏れ、何かの気配が感じられた。

「ねえ、聞こえた?」鈴木の声が背後から聞こえ、佐藤は振り返った。
そこには彼女の名を呼ぶ霊の姿が見えた。
それは確かに彼らの前に立ち尽くしていた。

「私の名前は由美。このレストランで消えてしまったの」と彼女の声は静かだったが、彼らの中に恐怖が広がっていくのがわかった。
由美の顔はどこか寂しげで、彼らに何かを訴えているようだった。

「私を覚えてほしい」と彼女は続けた。
その言葉は、何かを思い出させるような響きがあった。
佐藤は一瞬、彼女の目の中に吸い込まれそうになった。
彼は何も言えず、その場に立ちすくんだ。

鈴木は怖がりながらも、由美に近づいた。
「どうしてここにいるの?」と問いかけたが、由美は悲しそうに笑みを浮かべるだけだった。
「私も、忘れられたくなかったの」と彼女の声が真っ暗なレストランに響いた。

その瞬間、空気が変わった。
佐藤は不意に、由美の存在を感じることができなくなった。
彼女の姿が、まるで風に消える霧のように薄れていったのだ。
「由美!」鈴木が叫ぶが、それは虚しく空間に響き渡るだけだった。

次の瞬間、周囲の光景が変わり、彼らの目に映るものが雲のように揺れ動く。
どこにいるのかもわからない空間に放り込まれた彼らは、恐怖で震えながら覚醒しようと試みたが、意識は次第に曖昧になっていく。

「やめて!助けて!」佐藤は心の奥で叫んだが、その声は誰にも届かない。
鈴木はその場に立ち尽くし、不安の色が彼女の目に宿る。
「由美、どうか帰ってきて!」彼女は必死に叫んだが、やがて音が消え、ただ静寂だけが広がる。

彼らが感じた恐怖の余韻は、レストランの隅々まで浸透し、由美の存在を永遠に感じることとなった。
彼らはその後、二度とこの場所に戻ることはなく、やがて忘れられる運命にある。
しかし、由美の記憶は、彼らの心の中で永遠に生き続け、消えた先に存在した恐怖を思い起こさせるのだった。
レストランは静まり返り、夜の間、再び強い冷気が漂い続けた。

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