「忘れられた道の声」

友人たちとの特別な旅行のために訪れたトンネル。
名も無きそのトンネルは、地元の人々から「忘れられた道」と呼ばれ、不気味な噂が絶えなかった。
そこで起こるとされる奇妙な現象に興味を持った健太は、仲間たちを誘い、夜の闇に包まれたトンネルに向かうことを決めた。

「このトンネルには、入ったら解けない呪いがかかっているみたいだよ。」友人の花子が話すと、他の仲間たちも感じていた恐れを笑い飛ばしていた。
しかし、健太はそれに興味をそそられ、絶対に何かを確かめてみたいと思っていた。
彼は友人たちに「大丈夫だよ、みんなで一緒に行くんだから。何も起こらないって。」と言い聞かせ、不安を和らげることにした。

トンネルに到着すると、異様な静けさが彼らを迎えた。
薄暗い中、彼らは懐中電灯を掲げ、恐る恐る進んでいく。
中に入ると、誰もいないはずの空間から、微かな足音が聞こえ始めた。
仲間たちは驚き、互いに目を合わせたが、すぐにそれが風のせいだと思い込むことにした。

しかし、すぐにその状況は不気味さを増していった。
突然、健太の足元に黒い影が現れ、彼は思わずバランスを崩す。
「な、なんだ!?」動揺した健太は瞬時に振り返ったが、誰もその正体を掴めなかった。
影は一瞬で消え、彼はそれを現実に受け入れようと必死だった。

「帰ったほうがよくないか?」花子が言葉を発したが、健太はそれを許さなかった。
「いや、もう少しだけ進もう。実は、何かが理解できる気がするから。」

彼らはさらに進んで行くと、トンネルの真ん中で急に室温が下がり、周囲はさらに静けさを増した。
まるで時間が止まったかのような感覚に包まれる。
すると、健太の頭の中に異様な声が響いた。
「解いてほしい……解いてほしい……」

その瞬間、彼は声の主を知ることとなった。
トンネルの奥から現れたのは、呪われた霊だった。
彼の目は悲しみの色を帯びており、苦しみを抱えたまま、仲間たちに必死に向かってくる。
「私はここに閉じ込められている。助けてほしい。」

仲間たちはその光景に恐れおののくも、健太だけはその霊に駆り立てられるように近づいていった。
「あなたを解放するためにはどうすればいいの?」彼の問いかけに霊は悲しげに微笑んだ。
「孤独を解消し、私の背負った重荷を実にすることが必要だ。」

それを聞いた健太は、仲間たちの手を握りしめた。
「みんな、一緒にこの霊を助けよう。私たちが繋がっていれば、きっと実現できる。」

花子たちは恐怖に震えながらも、健太の決意に従うことにした。
彼らは一つの円を作り、懐中電灯の明かりをともったまま、心を合わせて霊に祈りを捧げた。
「私たちの思いを届けます。あなたが安らかに解放されるように。」

すると、トンネルの壁がゆっくりと揺れ始め、空気が変わった。
霊が放つ光が急速に広がり、仲間たちを包み込んだ。
健太はその安らぎを感じながら、力が抜けていくのを感じた。
やがて、霊は微笑みを浮かべ、彼らの目の前から消えていった。

その瞬間、トンネルの壁の奥から温かい光が漏れ始め、彼らは一瞬だけやすらぎに包まれた。
失われた孤独が解消され、トンネルの神秘が解き明かされたのだった。

健太たちは無事トンネルを抜け、外の光を浴びた時、心の中の重荷が一掃されたように感じた。
「私たち、何かを成し遂げたね。」花子の言葉に、みんなが頷いた。
その夜の出来事は、忘れられない思い出となり、長い間心の中に住み続けることになった。

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