「忘れられた義理の神社」

田舎の小さな村には、古びた神社があった。
そこには、「お祀りされた義理」という言い伝えがあり、村人たちにとっては神聖な場所だった。
しかし、数年前に起きた一件から、その神社は村の忌み嫌われる場所となっていた。

その年、村では若者たちの姿が次第に減っていった。
特に、自らの道を選び、都会に出て行く者が多かった。
村の風景が徐々に変わり、昔からの顔ぶれが少なくなっていく中、ある若者の名が噂されるようになった。
彼の名前は修平。
彼は都会で成功を収め、自らの夢を叶えた有名なデザイナーになった。

しかし、彼の成功は村の人々にとって、少々複雑な感情を呼び起こすものだった。
修平が出て行った後、村では急速に衰退が進み、特に古びた神社の存在が薄れていく中、彼のことを思い出す者は少なくなっていた。
そのため、村人たちは彼が戻ってくることを願い、彼に見捨てられた故郷への義理を感じていた。

数年が経ったある日、修平は何かの拍子で村に戻ることになった。
彼は旧友たちと再会し、神社の近くでふと足を止めた。
見慣れたその場所がどう変わってしまったのか、彼の心には複雑な思いが渦巻いた。
神社は草に覆われ、鈴がついた大きな木は枯れかけている。
かつて賑わっていたはずの場所が、今は静まり返っていた。

修平は神社に近づき、その発展を期待して声をかけた。
「お久しぶりです、村の皆さん。」 しかし、その声には誰も反応しなかった。
彼は少しだけ不安を感じた。

その夜、修平は神社の近くに泊まった。
しかし、彼の夢に不気味な光景が訪れた。
夢の中で、彼は神社の中にいる自分を見た。
そこには彼が幼い頃、仲良くしていた友人たちが揃っていた。
しかし、彼らの表情は冷たく、何かを訴えかけているようだった。

「戻ってきて、修平!私たちは待っている!」 彼らは口々に叫んでいたが、彼の耳にはその声が届かなかった。
ただ、彼の心には重い思いが残っていた。

次の日、村の人々は修平に近づくことができなかった。
彼の夢の中の幻影のように、村から遠ざかっているように感じられた。
彼は故郷に対する義理を忘れたかのように、街の喧騒に身を委ねていた。

そして、次第に村には恐ろしい現象が起こり始めた。
神社に行く者は次第に消えていき、村には不気味な静けさが広がった。
村人たちは恐れを抱きながらも、何をどうしたらいいかわからずにいた。
だが、ある日、一人の村人が神社を訪れた。
「これは修平のせいだ…彼が戻ってこなかったから、このようになったのだ。」

噂は瞬く間に広まり、さまざまな意見が飛び交う中、修平の名前は村の中で忌み嫌われる存在となってしまった。

その夜、再び修平は同じ夢を見た。
今度は、彼の元に集まった友人たちが一斉に手を伸ばし、叫んでいた。
「お前は僕たちを捨てたのか!」 彼は目の前で彼らが消えていくのを見つめ、心に重石が乗った。

そうして、彼は覚悟を決める。
過去の因縁を壊し、彼自身も償うために村に戻ることを選んだ。
駅に着いた彼は、温かい義理の感情を胸に抱きながら、再び神社へ足を運んだ。

明かりが戻ることで、村の風景も少しずつ変わり始めていた。
修平と村人たちの心の間に繋がりが生まれ、義理の重みを理解することができたとき、神社の封印は解かれ、隠されたものが戻ってくるのだった。
村は次第に明るさを取り戻し、彼はその中で新たに人々と共に生きることを決意した。

タイトルとURLをコピーしました