ある学校の裏側には、誰も近づきたがらない古い校舎がひっそりと立っていました。
その校舎は、今から数十年前に使用されていたもので、長い間放置されていました。
噂では、その校舎には「超」という異常な存在が住み着いていると言われていました。
自称肝試し好きの高橋は、自分の友人たちを誘って、その校舎に夜中に忍び込むことを決めました。
興味本位で始まったその企画は、しかし次第に不気味な雰囲気に包まれていきました。
彼らは懐中電灯を手に、恐る恐る校舎の扉を開けました。
中は、暗く静まり返り、何年も手入れされていない教室や廊下が広がっていました。
高橋たちは周りを観察しながら進んでいきましたが、その時、突然「え」という音が響きました。
恐ろしいほどの低い声で発せられたその一言に、友人たちは一瞬立ち止まりました。
「誰かいるのか?」と高橋が問いかけましたが、返事はありません。
その冷たい空気の中、彼らは次第に気持ちが悪くなっていきました。
恐れを感じる一方で、好奇心が勝り、さらに奥へと進みました。
薄暗い教室に入ると、古びた机や椅子が並んでいて、まるで誰かがここで待っているかのようでした。
その瞬間、テーブルの上に置かれた古い教科書が急に開き、ページがひらひらとめくれ始めました。
まるで無言の呼びかけのようでした。
動揺した高橋たちは、その教室を出ようとしましたが、次の瞬間、廊下の端に立つ少女の姿が目に入りました。
彼女は、黒い髪を振り乱し、真っ白な制服を着て立っていました。
その表情は淡々としていて、まるで彼らを見つめているかのようでした。
高橋は恐怖に駆られ、他の友人たちにもこの少女の存在を伝えようとしましたが、誰もその姿を見ていませんでした。
彼のみがその異様な光景を目撃していました。
人間とは思えないほどの冷たい視線から逃れるように、彼は走り出しました。
廊下を駆け抜け、階段を下りると、突如としてどこからともなくその少女の声が聞こえ始めました。
「私を…捨てないで…」その声は耳にこびりつき、高橋の心に深い恐怖を植え付けました。
彼は仲間のもとへ走り、何が起こったのかを必死に説明しましたが、皆は全く理解していないようでした。
恐怖に襲われた高橋は、仲間たちにもう一度冷静になって考えるよう言いました。
未だに少女の声が響いていたからです。
彼らは逃げる準備を始めましたが、校舎の出口はまるで呪縛されたかのように見つからないのです。
スイッチが押されたかのように、再び「え」という声が校舎全体に響き渡りました。
高橋の背後に、静かに少女が近づいてきます。
誰もがその気配を感じ、そしてその姿に確信しました。
高橋は、恐怖心を抑えきれなくなり、仲間を置いて逃げ出しました。
その後、彼は無事に外に出ましたが、彼の心には、あの校舎に残された少女の声がいつまでも残っていました。
高橋は、その後も何度となくあの声を思い出し、二度とその校舎に近づくことはありませんでした。
だれも知らない、その少女の正体とは一体何だったのか。
校舎が存在し続ける限り、彼女の存在は人々の心に深く潜んでいるのかもしれません。