静かな午後、学校の廊下は、どこか異様な空気を纏っていた。
教室では、生徒たちが宿題に取り組んでいる中、彼らの目は、いつもと違う一つの扉に釘付けになっていた。
その扉は、誰もが知る裏の階段の入口。
しかし、普段は開かれたことがない秘密の場所だ。
誰も入ったことのないその場所に、興味を持ったのは、五人の仲間、太一、絵里、直樹、亜美、そして翔だった。
「ねえ、行ってみない?」亜美が最初に提案した。
みんなの恐れをかき消すように、彼女の目は興奮で輝いていた。
直樹は一瞬ためらったが、「どうせなら、冒険してみようぜ」と言い、他の仲間たちもそれに続くことにした。
彼らは、周りの監視を気にしながら、その扉を開いた。
古びた階段が彼らを待ち受けていた。
暗く、冷たい空気が全身を包み込み、まるで別の世界に踏み込んだような感覚だった。
足元からは、微かな音が聞こえ、少しひやりとした。
太一は緊張を和らげようと、大きな声で「誰かいるのか?」と呼びかけたが、返事はなかった。
彼らは徐々に階段を下り、真っ暗な空間に足を踏み入れた。
薄暗い廊下の先には、いくつかの扉があった。
その一つが特に目を引いた。
古い木製の扉には、緑色のペンキが剥がれ、腐った匂いが漂ってきた。
「あれ、開けてみようよ!」絵里が言った。
彼女の言葉に、全員が恐る恐る近づいた。
翔が懐中電灯を照らすと、薄暗がりの中に何かが映り込んだ。
「あれ、影か?」彼は言い、もう一度照らした。
すると、その影は急に動き出し、廊下の奥へと消えていった。
「え?今の見た?」直樹が驚いて言った。
興奮と恐怖が混ざり合い、仲間たちは互いに目を見合わせた。
「もう帰ろうよ」と太一が言ったが、亜美は反対した。
「せっかく来たんだから、もう少しだけ探検しよう!」
結局、彼らは再びその影の後を追うことにした。
暗い廊下を進むにつれ、影は次第に彼らを引き寄せるように感じられた。
踵音だけが響く静かな空間の中、絵里は「誰かいるの?」と何度も呼びかけたが、誰も応えることはなかった。
影を追い続けると、彼らは一つの大きな教室にたどり着いた。
そこは、座席がボロボロで、黒板には不気味な文字が書かれていた。
「ここに来てはいけない。」それを見た瞬間、全員が背筋を凍りつかせた。
影は、まるで彼らの恐れを楽しんでいるかのように、彼らの周囲を何度も周回している。
「もう帰ろう、マジでこわいよ!」直樹が叫んだ。
その時、影は急に彼らの目の前に現れた。
まるで誰かの形をしたように見えたが、顔は見えず、ただ黒い影が彼らを包み込んだ。
恐怖で逃げ出そうとしたが、体が動かなかった。
影は次第に大きくなっていき、彼らの声をかき消すように、耳をつんざくような囁きが聞こえた。
「出たくないなら、一緒にここで過ごそう…」
その言葉に恐れながらも、彼らは必死に出口を探した。
翔が「ここだ!」と叫び、影が一瞬静止した瞬間、全員がその扉に向かってダッシュした。
間一髪、影が迫る中、彼らはその扉をこじ開け、逆戻りして廊下を駆け抜けた。
裏階段を上がり、廊下を走り抜けた時、ようやく彼らは光のある場所に戻ってきた。
息を整え、振り返ると、どこにも影は見当たらなかった。
すべては夢だったのだろうか、恐怖に包まれた出来事だったのだろうか。
翌日、学校の廊下でまたその扉を見かけたとき、彼らは二度と入ることができなかった。
それ以来、あの影が学校に潜んでいるという噂が立ち、生徒たちはその場所を恐れ、避けるようになった。
影は、今もまだその暗い廊下で、次の冒険者を待っているに違いない。