「忘れられた呼び声」

公(こう)は、若い頃から趣味で心霊スポット巡りをしていた。
友達と一緒に訪れることもあれば、一人で静かに心の中で興味を満たすことも多かった。
特に、廃病院や abandoned hotel は彼の大好きな場所だった。
ある日、彼はネットで見つけた噂の地、つまり「離島にある廃墟」に行くことを決めた。

その日は日曜日であり、早朝のフェリーに乗り込んだ。
小さな船には他に数人の乗客しかおらず、彼は海の青さを楽しみながらしばらく過ごしていた。
しかし、やがて雲がかかり、風が強くなってきた。
公は気にせず、目的地に向けて船が進むのを見つめていた。

島に着くと、すぐに廃墟へ向かった。
長い間放置されているというその建物は、周囲の木々に飲み込まれそうなほど自然が繁茂していた。
公は心を躍らせながら、ドアを押し開ける。
中に入ると、廊下の奥には何か不気味な気配を感じた。

彼はカメラを取り出し、周囲の写真を撮り始めた。
しかし、その瞬間、何かが彼の背後で動いたような気配を感じた。
振り返ると、誰もいない。
しかし、どこかに冷たい風を感じた。

公は恐怖に襲われながらも、そのまま探索を続けることにした。
しばらく進むと、驚くことに心の中で特定の「誰か」の気配を感じ始めた。
それは、何かを求めるような存在感であった。
彼は「もしかして、ここには霊がいるのか?」と考え始めた。

次に彼が見つけたのは、かつての病室だった。
暗闇の中、カーテンがゆらりと揺れているのが見えた。
その瞬間、公は一瞬おぞましい感覚に襲われた。
病室の壁には、何やら言葉のようなものが書かれていた。
しかし、近づいてもそれはよく見えない。
彼はそれを写真に撮ることにした。

そして、写真を見返すと、彼は驚愕する。
カメラのレンズ越しに、確かに「誰か」の姿が映り込んでいた。
それはぼんやりとした輪郭で、どことなく悲しげな表情を浮かべている。
公は、心臓が大きく高鳴り始めるのを感じた。
やはり、この場所には何かがいるのだ。

不安に駆られながらも、公はその場所を離れようとした。
そのとき、今度は「か」という声がはっきりと耳に届いた。
「助けて」と言っているかのようだった。
後ろを振り返るが、誰も見えない。
恐怖と興味が交差する中、公はその声に導かれるように動き続けた。

彼は廃墟の地下室にたどり着いた。
そこは暗く、冷たい空気が絡みつく。
すると再び耳元で「わ」と囁く声がした。
その瞬間、公は思わず逃げ出したくなるほどの恐怖感を味わった。
息を弾ませながら、一階へ急いで戻ろうとしたが、廊下の壁が何かに反応しているように揺れている気がした。

公はその場に立ち尽くし、何かが彼に近づいているのを感じた。
振り返ることもできなかった。
しかし、そのとき、背後から「公!助けて!」という声が再び響いた。
目を閉じて震える彼は、その声の主が懐かしい誰かだと瞬時に悟った。
それは、彼の亡くなった姉の声だった。

彼は全身に恐怖と懐かしさが交錯し、思わず「姉ちゃん!」と叫んでしまった。
すると、冷たい風が彼の周りを駆け抜け、彼は意識を失ってしまった。

目が覚めると、彼は廃墟の外に横たわっていた。
どうやって外に出られたのか、記憶はぼんやりとしていた。
公は急いで帰りのフェリーに乗り込み、島を後にした。
それ以降、彼は心霊スポットへの訪問をやめる決心をした。
そして、あの廃墟での出来事は、彼の心に永遠に残った。
助けを求める苦しい声は、今でも耳の中で響いているのだった。

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