静かな田舎町には、一軒の古びた家があった。
その家は、長い間人が住んでいないようで、周囲の自然に静かに飲み込まれていた。
人々はこの家に近づくことすら避け、ただその存在に怯えていた。
主な舞台となるこの家には、若い女性の照子が訪れた。
照子は祖母の残した遺品整理のため、田舎の実家に帰ることになったのだ。
彼女の周囲には、祖母が厳格な性格であったため、過去のことを語る者は誰もいなかった。
照子は好奇心から、家の奥深くにある秘密を探ることに決めた。
ある日、照子は屋根裏部屋に入ることにした。
普段は暗くて恐ろしい印象を受けるその場所には、古い家具や、埃まみれの本が放置されているのみだった。
彼女は手を伸ばし、奥にあった小さな木箱を見つけた。
その箱は時の経過を感じさせる装飾が施されており、不気味な雰囲気を醸し出していた。
照子はその箱を開けてみることにした。
中には、古い手紙と共に、小さな人形が入っていた。
人形は一見可愛らしく見えたが、何か違和感を感じるような不気味さがあった。
照子は好奇心にかられ、手紙を読み始めた。
手紙には、照子の祖母が若い頃に起きた出来事が綴られていた。
それは、近くの村で起きた失踪事件についてのことだった。
手紙の中では、失踪した少女の名前が明記されていた。
それは、照子の名前と似た響きのある名前で、彼女は思わずその名を呟いた。
「たかやま みねこ」と。
女の子は不運な事故で亡くなり、その霊は家の中に封じ込められているという。
照子は驚愕し、手紙を手放すことができなかった。
彼女はさらに不気味な予感を覚えたが、考える暇もなく、手から人形が滑り落ちて床に転がった。
転がった人形は、じっと駆け引きのように照子を見つめているように感じた。
彼女は慌ててその人形を拾い上げようとした瞬間、背後でひんやりとした風が吹き抜けた。
振り向くと、そこには誰もいなかったが、耳元にはかすかな囁き声が響いていた。
「私を忘れないで…」
その声は、照子の心に直接響くように感じられた。
彼女は思わず震え上がり、戻ることを決意する。
しかし、心の中には何かが残っているようだった。
人形を持ったまま、照子は屋根裏から逃げ出したが、その日はただ恐怖で一夜を明かすこととなった。
次の日、照子は町の図書館でみねこの失踪事件の詳細を調べることにした。
そこで、彼女が生前に書いた日記を見つけた。
日記には、みねこが大好きだった人形と、友達になりたかったという思いが綴られていた。
照子はどんどんその内容に引き込まれていく。
照子は、人形の存在がみねこの思いを示すものであると考え始め、彼女のためにできることは何かと悩んだ。
町の人々がその過去を語り継がない限り、みねこの霊は安らがないのではないかと思ったのだ。
照子は町の人々に意を決してみねこの話を伝えることにした。
みんなは驚いた様子で聞き入ってくれたが、次第にみんなは同情してくれた。
彼女は思いの丈をすべて話し終えた後、「彼女を忘れないでください」と付け加えた。
その日を境に、照子は怪奇現象に悩まされることはなかった。
しかし、みねこの存在は常に彼女の心の片隅に、そして田舎の記憶の中に確かに生き続けることとなった。
照子は、心に届いた女の子の声を忘れることなく、彼女の話を語り続けることで、みねこの霊がやがて安らぐ日が来ることを願い続けた。