静かな村の片隅にある小さな神社。
その神社の境内には、古びた碑が立っていた。
村人たちはその碑を「忌み石」と呼び、決して近づかないようにしていた。
そこにはかつて、この村で数世代にわたって続いた恐ろしい伝説があった。
主人公の智也は、最近この村に転居してきた若い男性だった。
彼は古い話を聞くことが好きで、特に怖い話を収集していた。
彼の好奇心は、忌み石にも向けられた。
この石にまつわる話を聞いていくうちに、彼はその真相を確かめずにはいられなくなった。
「この碑には、かつて斉(し)って呼ばれる悪霊が封じ込められているんだよ」と村のおばあさんが語る。
「斉は、村に不幸をもたらす存在だと言われている。しかし、誰もその姿を見たことはない。ただ、彼が来てから何かが狂い始めたとも言われている。」
智也の心に疑念が浮かび上がった。
「本当にそんなものが存在するのか?」彼は自らの目で確かめるため、夜遅くに神社を訪れることにした。
月明かりの下、静まり返る境内に足を踏み入れ、忌み石の前に立った。
その瞬間、冷たい風が吹き、彼の背筋が凍りついた。
かすかな声が耳元でささやく。
「来るな……来るな……」しかし、智也はその声を無視し、碑を見上げた。
表面には古い文字が刻まれていたが、読み取ることはできなかった。
彼の興味はさらに深まり、石に手を触れた瞬間、体が強い電流に襲われるような感覚を覚えた。
「功を求める者は、らしからぬ試練を受けるだろう」と不気味な声が響いた。
彼は驚いて後ずさりしたが、すでに遅かった。
目の前の光景が変わり始め、彼は目をそらすことができなかった。
気がつくと、彼は異次元にいるような感覚に陥った。
周囲は暗闇に包まれ、目の前にはかつての村人たちが現れた。
彼らは恐怖に満ちた表情で斉の姿を見つめ、必死に逃げようとしている。
智也はその状況にどれほど打ちのめされたか、言葉では表現できなかった。
彼は今、彼らが話していた「斉」を目の前にしていた。
木々の陰から顔を覗かせるのは、醜い顔を持った霊であった。
彼の目は盲目で、ただ感情だけが滲み出ていた。
そして、智也の心に浮かんだのは、村人たちの声だった。
「忌み石に触れるな……それはお前と村を呪うだけだ。」
智也は思わず叫んだ。
「何が目的なのだ!?どうすれば斉を倒せるのだ!?」その瞬間、斉の目が彼に向けられ、不敵な笑みが浮かんだ。
「お前の過去、罪を見せてやろう」と言い放つと、智也の心の奥に潜んでいた恐怖や後悔が次々と呼び起こされた。
彼は過去の自分と対峙することになった。
自分の選択がもたらした結果、裏切りや失敗、そして人々に与えた影響。
そのすべてが、斉の原動力となり、彼に迫ってくる。
智也は自分に課された「忌」を知り、心底から恐れた。
そこで彼は一つの決断を下した。
「もう一度、あの村人たちに謝ろう。私が過去に引き起こした不幸を、取り戻してみせる!」彼の強い意志に呼応するように、暗闇の中で光が湧き上がり、斉が後退していく様子が見えた。
目が覚めた時、智也は神社の境内に戻っていた。
彼の手には、忌み石の欠片が握られていた。
その瞬間、智也は知った。
恐怖を乗り越え、自分の罪を償うことが、斉から解放される唯一の道であることを。
それ以来、智也は村のために尽くすことを決意し、人々の心の中に悲しみを取り戻すため、日々の努力を惜しまなかった。
そして彼は、斉の恐怖から村を守ることができたのだ。