「心の輪廻」

創は、いつもと変わらない日常を過ごしていた。
彼は一人暮らしをしている小さなアパートの部屋にいると、時折、違和感を覚えることがあった。
特に朝、目が覚めた瞬間、何故か心に重いものを感じていた。
これはプレッシャーなのか、それとも何か別のものなのか、彼には訳が分からなかった。

ある晩、創は友人の佳乃とアパートで過ごすことになった。
二人で話しながら過ごすうちに、佳乃がふと口を開いた。
「創、最近変なことが起きているって聞いたことある?」その言葉に創は反応した。
「変なことって、何のこと?」佳乃は続ける。
「例えば、自分の心の中の声が聞こえるとか、誰かに監視されている気がするとか…」

創はまるで冷や水を浴びせられたような気分になった。
何を隠そう、彼も最近、心の奥底から響くような声を感じていたからだ。
佳乃が言うように、それは彼の思考に直接語りかけてくるようなもので、日に日に強くなっていた。

夜が深まると、佳乃が不思議な話を持ち出した。
「実は、私が知っている心霊スポットには、輪のようなもので囲まれた場所があるんだって。そこに行くと、心の奥から何かが出てきて、自分の中に溜まったものを見せられるらしい。」そんな話を聞くと、創の心には好奇心が芽生えた。

数日後、創は友人たちと共にその心霊スポットへ向かうことにした。
夜の静けさに包まれた森の中、彼らは輪の形をした石の囲いを見つけた。
そこに立つと、自分たちの心の中の声が louder になっていくのを感じた。
友人たちも同様の反応を示し、一人また一人と、その場から動けなくなってしまった。

創は周りを見回し、その場が不気味さを増していることに気が付いた。
「このままではいけない」と思った時、心の奥に潜む声が彼に語りかけた。
「お前は今、自分自身を知りたいのか?」創は何も答えられなかった。
彼の心の中には、今まで考えもしなかったような感情が湧き上がってきたからだ。

その瞬間、彼の目の前に不気味な影が現れた。
それは彼の過去の記憶、後悔や未練が集まったものだった。
その中には、創がこれまで避けてきた人々との関係や、自分自身に課したメンタルブロックがあった。
彼は目を逸らしたい気持ちと同時に、それを受け入れなければならないことを理解した。

その影が手を伸ばすと、創は強い恐怖を感じた。
逃げ出したいという思いと、真実を受け入れなければならないという葛藤の中で焦りが募った。
しかし、その一瞬の勇気が彼を突き動かした。
「私は、自分を変えたい」と叫んだ。

すると、暗い輪がパッと光に包まれ、彼はその瞬間、目を閉じた。
そして、再び目を開くと、彼は森の外に立っていた。
心霊スポットでの出来事は夢だったのだろうか、周囲には何も変わったものは見当たらなかった。
しかし、彼の心には確かな変化が生まれていた。
何かを受け入れたことで、重荷がようやく少し軽くなったと感じた。

その日以降、創は自分の心と対話し、自分自身を受け入れる勇気を持てるようになった。
周囲にいる人々との輪も深まり、一つ一つの関係を大切にすることで、彼は自身の人生を豊かにしていくことができた。
変わったのは、創の周りではなく、彼自身だったのだ。

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