心の奥深くに潜む秘密。
それは、ある「誓い」にまつわるものだった。
佐藤直樹は、幼少期からの仲間である鈴木美香との間に交わした、ある約束を忘れられずにいた。
彼らは小学生の時に「一緒にずっと仲良くいよう」と誓ったのだ。
それから時が経ち、彼らは高校生になった。
けれども、直樹は美香のことを思い出すと、いつも胸が締め付けられるような苦しさを感じていた。
美香は、ある日突然姿を消した。
失踪事件は町を揺るがし、直樹の心にも重くのしかかった。
しかし、美香が消える前に何かを伝えようとしていたと思うと、その思いが彼の心に渦巻き続けた。
ある夜、直樹は不思議な夢を見た。
夢の中で、美香は薄暗い廃墟のような場所に立っていた。
彼女は虚ろな目で直樹を見つめ、「私の心が、あなたの心の中に残っている」と告げた。
その場面は、今までに見たことのないほど現実的だった。
直樹は、彼女を救うために何かをしなければならないと強く感じた。
目が覚めた直樹は、夢の中の美香の言葉を思い返し、自分の心が何を抱えているのかを考え続けた。
彼は、かつて交わした誓いを果たすために行動を起こす決意をした。
「美香を探し出そう。絶対に忘れないというその約束を、果たすんだ。」
そう思い立った直樹は、彼女が消えたあの日のことを思い出し、耳を澄ませた。
町の隅々を歩き回りながら、どこかの誰かが美香のことを知っているかもしれないと探し続けた。
周囲の人々に問いかけるたび、直樹は自分の中に深い孤独が浸透していくのを感じた。
ある日、直樹は古びた神社の前を通りかかった。
そこには、地域の伝説として語り継がれる「心の器」の話があった。
人々は、その神社で心の中に隠された秘密を明らかにすることができると信じていた。
「無くしたものを思い出すことができるかもしれない」との思いで、直樹はその神社に足を運んだ。
神社の境内には、様々な供え物が置かれていた。
そして、中心の大きな石の前では、懺悔をする人々の姿が見えた。
直樹もその場に立ち、自身の心の内にある思いを吐き出そうとした。
「美香、私はあなたを忘れない。必ず探し出す。あなたの心が私の中にあることを、決して忘れないから!」
直樹は思わず声を上げた瞬間、周りの空気が静まり返った。
何かが彼の心に響いてきた。
その瞬間、彼の脳裏に美香の笑顔や過去の思い出が鮮明によみがえった。
直樹は「美香、どうか私のもとに戻ってきて!」と叫び続けた。
その時、風が吹き抜け、直樹の目の前に美香の姿が現れた。
彼女は夢の中で見た通りの服装をしており、少し悲しげな表情を浮かべていた。
「直樹、私のことを思い出してくれてありがとう。でも、私の心はここに囚われているの」と美香は言った。
直樹はその言葉に凍りついた。
彼女は彼の心の中に生き続けているが、実体はこの世にいないのだ。
「どうすれば、君を解放できるのか?」彼は必死に尋ねた。
「忘れないこと。私を思い続けること。それが私にできる唯一の誓いなんだ」と美香は言った。
その瞬間、彼は彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
しかし、美香は霧のように消え、その場に静けさだけが残った。
直樹はしばらく呆然として立ち尽くしていたが、その後、彼の心には彼女の思いが生き続けるのだという強い決意が生まれた。
これからも美香を想い、彼の誓いを果たすことこそが、彼女をこの世に留める唯一の方法だと悟った。
それからというもの、直樹は常に美香を心に抱きしめるように生きることを決心した。
彼女は消えたかもしれないが、直樹の心の中には、彼女の記憶と共に生き続けるのだ。