「影を追う者」

ある小さな町に、若い女性、佐藤恵美が住んでいました。
恵美は一人暮らしをしており、自宅の近くにある山に秘められた伝説に魅了されていました。
その山には、古い神社があり、そこには「呪われた者は、追いかけられ、果てしのない恐怖に襲われる」という噂がありました。

恵美は好奇心からその神社に足を運ぶことに決めました。
夜が訪れると、彼女は懐中電灯を手に取り、暗い山道を進んでいきます。
まるで闇が彼女を包み込むように、周囲は静まり返り、奇妙な緊張感が漂っていました。
神社に着くと、不気味な雰囲気が彼女を迎えました。

神社の中に入ると、そこには朽ち果てたお札やお供え物が散乱しており、長い間誰も訪れていないことが伺えました。
恵美は不安を抱えつつも、好奇心に駆られてお札を手に取りました。
すると、その瞬間、寒気と共に耳元で「帰れ」と囁く声が響きました。
しかし、彼女は恐れを押し殺し、神社の奥深くへと進んでいきました。

彼女が中に入ると、空気が一層重くなり、背筋に冷たいものが走る感覚がしました。
「ああ、これはただの噂だ」と自分に言い聞かせるものの、心臓は早鐘のように打ち続けました。
そして、彼女はふと後ろを振り返ると、何かが彼女に迫っていることに気がつきました。

それは影のように黒く、はっきりとした形を持たない存在でした。
恵美は恐怖で動けなくなり、ただその影に向かって逃げることしかできませんでした。
山道を駆け下りると、まるでその影が彼女を追うように、足音が耳に響きます。

家に帰りついた恵美は、心を落ち着けつつも、次第に恐怖が心の中に深く根付いていくのを感じました。
日常に戻ったつもりでも、夜になるとあの神社の出来事が頭から離れません。
彼女は悪夢にうなされるようになり、日を追うごとに影が彼女を追う感覚が強まっていきました。

それから数日後、恵美は再び神社を訪れることを決意しました。
神社の中で成仏できぬ存在がいるのか、彼女の恐怖を煽る何かがいるのか、その正体を確かめる必要があったからです。
再び山道を上がり、神社の奥に進むと、先日耳にした声が再び彼女に囁きました。
「果たして呪いを解くことができるのか?」と。

恵美は意を決し、その影に向かって自分の意志をぶつけました。
「私は恐れない、あなたを解放する。」すると、影は一瞬止まり、怯えたように後退します。
恵美はその瞬間を逃さず、全力で呪いを解くことを考えました。

終焉が訪れると、恵美は無事に神社を後にしました。
山を降りるとき、追っていた影はもう感じませんでした。
だが、心の中にはいつまでも恐怖が残っており、彼女の背後には何か暗いものが常に潜んでいる気配がするのです。

恐怖の呪いは解けたかもしれませんが、影は心の奥に影を落としていました。
そしてそれは、彼女が一生追い続ける謎のように思えてなりませんでした。

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