「影を呼ぶ神社」

ある静かな村、深い森の奥に位置する「ぶ」村。
村には古くから伝わる言い伝えがあり、その中には忌み嫌われる場所があった。
それが、村のはずれに佇む朽ち果てた「廃神社」だった。
村人たちはそこを避け、近づくことすらしなかった。

主人公の佐藤は、最近この村に引っ越してきた若者だった。
彼は新しい環境に馴染もうと、日中は村を歩き回り、村人たちと友好関係を築いていた。
しかし、ある日、そんな彼の耳に廃神社の噂が入った。
村人たちは口をそろえて、「近づいてはいけない」と警告したが、佐藤はその禁忌に興味を惹かれていた。

「本当に怖いのだろうか」と思った彼は、感情に流されるままにその神社へと足を運んだ。
夕暮れ時、薄暗くなった森を抜けて、ついに廃神社に到着すると、周囲は静まり返っていた。
神社の扉は半開きになっており、内部には長い間忘れ去られたような霊気が漂っていた。

神社の中は薄暗く、朽ちた神像が不気味に鎮座していた。
佐藤は中に入ると、なぜか心臓が高鳴った。
彼は一歩一歩、神像に近づくと、突然、寒気が全身を駆け抜けた。
その瞬間、背後から何かの気配を感じ振り返ると、誰もいないはずの空間に黒い影がちらりと見えた。
目を凝らしても、ただの影に過ぎなかったが、佐藤はその瞬間、何か不吉な運命が待っているような気がした。

帰ろうと振り向いた時、突如として目の前に巨大な影が現れた。
それは、神社に祀られている神の化身のようなものだった。
佐藤は恐怖にかられ、逃げ出そうとしたが、足がすくんで動けなかった。
影は何も言わず、ただじっと彼を見つめていた。

次第に影には何か異様な存在感が漂い、彼の心に疑念を抱かせた。
「これは違う、私はただ興味本位で来ただけなのに」と思いながらも、影の目は彼の内面を見抜いているようだった。

突然、目の前に小さな男の子の姿が現れた。
その子は無邪気に笑っていて、何かを待っている様子だった。
彼は佐藤に向かって手を伸ばし、「おいで」とささやいた。
佐藤は戸惑いながらも、その声に導かれるように足を踏み出した。
しかし、その瞬間、男の子の表情が変わり、彼の目が真っ黒になった。
それに気づいた佐藤は、恐れと共に背中を押されるように逃げ出した。

その夜、佐藤はすべてを夢の中で繰り返しているように感じた。
目を覚ましたとき、胸の奥に重苦しいものが渦巻いている。
夢の中の出来事が現実となり、彼は自分の行動が村に災厄をもたらすのではないかと不安に駆られた。

それから数日後、村の周りで奇妙な現象が起こり始めた。
人々が一夜にして消えたり、無気力になったり、誰もが何らかの恐怖に沈んでいるようだった。
村の子供たちも元気をなくし、しょんぼりとした様子で過ごしていた。

そんな日が続く中、佐藤は他の村人たちが、神社の影と関わりがあると噂していることを耳にしました。
彼は自分の行動が何かに関与しているのではないかと悩み、ついに決心して再び廃神社に向かうことになった。

神社に到着し、影を恐れつつも、高らかに声を上げた。
「どうか私が間違ったことをやったなら、許してください!」と叫んだ。
すると、またあの無邪気な男の子が現れた。
彼の目は再び黒く、その声は制止するように響く。

「お前の心の中を、私たちは見ているよ」と。
佐藤は恐怖に震え上がり、彼の行動への責任を感じた。
その瞬間、神社の周りが激しい風に包まれ、影の声が耳元に響いた。
「人々の心が揺れている限り、お前の運命も決して変わらないだろう。」

その言葉が頭に響いたまま、佐藤は村へと帰ることとなった。
村人たちの悲しみや苦しみは、彼の心にも重くのしかかり、解決の糸口が見つからない限り、彼の心の中にも影が消えることはなかったのだ。
彼は、人々の心の中で何が起こっているのか、知ることはなかった。
ただ、彼が村にやってきた日から、彼の心に巣食った「影」だけは、永遠に消えることはなかったのだった。

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