ある町の外れにある小さな小学校。
そこには特別支援学級が設けられており、普通の生徒たちとは異なる存在として、人々から特別視されていた。
しかし、ある一人の生徒、鈴木晴斗は、特にその学級で異彩を放つ存在だった。
晴斗は学業に秀でており、特に数学では飛び抜けた才能を見せていた。
同じクラスの佐藤美佳はいつも彼と一緒に勉強し、晴斗のことを尊敬していた。
しかし、次第に彼女の心に芽生えたのは嫉妬だった。
美佳は、晴斗が自分よりも優れていることに悔しさを感じつつも、彼と共にいたいと思っていた。
二人の成績は常にトップを競い合っており、その中で美佳の心には晴斗に対する複雑な感情が渦巻いていた。
秋の季節、学校の餅つきイベントが近づく中、美佳は晴斗の成功を祝うことができず、次第に彼への嫉妬が膨れ上がっていった。
美佳は「今度こそ私が彼を超えたい」と強く思い、夜な夜な勉強に精を出した。
しかし、一人だけ目立つ晴斗の影が、ますます重くのしかかってくる瞬間が増えていった。
ついに餅つき当日がやってきた。
学校の庭は人で賑わいを見せ、美佳の心の中は高揚と不安が交差していた。
彼女は晴斗とともに餅つきを楽しみながら、その裏で彼を断罪するような感情が湧き上がっていた。
そこへある物が目に入る。
晴斗がいつも持ち歩いている特別な計算器だ。
美佳はその計算器を手に取り、ぽろっと言った。
「これさえあれば、私も彼に勝てるかもしれない。」彼女はその計算器を持って帰り、夜中に一人こっそり勉強を始めた。
しかし、計算器からは不気味な冷たさが漂い、まるで別の意識を持っているかのように感じられた。
明け方、夢うつつの中で、美佳は不思議な夢を見た。
彼女は計算器に向かって、「私は晴斗よりもできる、自分が一番になりたい」と言った。
その瞬間、計算器が光り輝き、彼女はその力に飲み込まれていくような感覚に襲われた。
次の日、学校では晴斗が急に体調を崩し、授業を欠席。
そのニュースが流れると、美佳は心の底から安堵を感じてしまった。
しかし、彼の不在が続くにつれて、彼に何が起きているのかと不安も増していく。
友人たちから聞こえてくる話では、晴斗は深い眠りに落ち、「不思議な声に囁かれている」と噂されていた。
ある晩、美佳は計算器を返すことを決意し、夜遅く学校に忍び込んだ。
教室には静寂が支配している。
彼女は晴斗の席に向かい、計算器を置いた。
しかし、やがて背後から冷たい声が響いた。
「私の計算器を返すのか？」振り向くと、そこには晴斗の姿があったが、彼の目はどこか異様な光を放っていた。
「お前が私を陥れたのか。」彼の声は低く、異質な響きがした。
美佳はその場に立ち尽くした。
「私はただ…勝ちたくて…」言葉を続けられなかった。
晴斗は彼女の思いを理解し、自分の力をさも簡単に奪われてしまったことに腹を立てているようだった。
その瞬間、計算器が再び光を放ち、美佳はその光に吸い寄せられるようにして短く悲鳴を上げた。
次の瞬間、彼女は暗闇に埋もれ、影となり、晴斗の背後に立たされていた。
彼女は永遠に彼の傍にいることしかできなくなった。
それ以来、学校では美佳の姿は見えなくなり、毎夜、晴斗は彼女の声を耳にする。
「私はここにいる…あなたと共に。」陰に隠れた嫉妬が、二人を奇妙な絆で結びつけてしまったのだ。
勉強の結果がどうであれ、彼らは最終的には決して別れることのできない存在となってしまった。
