ある夜、友人たちと共にネオンが煌めく街を歩いていた雅也は、普段は賑やかな街がどこか不気味に感じられた。
色とりどりの光の中に埋もれるように、彼は「形」という怪しい看板を見つけた。
「形」とは、特殊な療法を行うという謎の店舗で、最近噂を聞いたことがあった。
噂によれば、心の痛みや悩みを癒すことができる場所だというが、何か裏があるような気がしていた。
友人たちはその看板に興味を示し、雅也を無理やり誘って中に入ることにした。
店内は薄暗く、柔らかな明かりが心地よい空間を演出していた。
その中央には、静かに座る老女がいた。
彼女は見るからに神秘的な雰囲気を持ち、笑みを浮かべているが、雅也の心には不安が広がる。
「いらっしゃい。ここに来るのは珍しいわね。心の痛みを癒したいのかしら?」老女の声は、どこか誘うようで、同時に警告するようでもあった。
友人たちは興奮して「ぜひやってみたい!」と口々に言い、雅也だけがためらっていた。
しかし、老女は彼に目を向け、「あなたも一緒に受けてみなさい。大切なものを見つけることができるかもしれない」と言った。
彼女の言葉に流され、雅也もその治療を受けることに決めた。
施術を受けるために、雅也はカーテンの向こうにある個室に導かれた。
そこには、独特な香りのアロマが焚かれ、心を落ち着かせる効果があった。
彼はリラックスし、まどろむように目を閉じた。
しかしその瞬間、彼の体がひたひたとした感覚に包まれ、不安が胸をよぎった。
次の瞬間、雅也は別の場所にいることに気づいた。
そこはネオンの光が消え、煙が立ち込める奇妙な世界だった。
周囲には彼の心の中に眠っていた「形」が浮かび上がり、懐かしい思い出や忘れかけていた感情が形を持って揺れていた。
彼はその形に触れることで、自分の過去を見つめ直すことになった。
だが、気づけば彼の周りには次第に不気味な影が迫ってきた。
「依存」の形を持ったそれらは、彼の心に潜む様々な不安や恐れの象徴だった。
彼は思わず後ずさり、心の中の痛みが再び彼を襲いかける。
どこか遠くには、老女の声が聞こえてくる。
「癒すためには、受け入れなければならないわよ。」
雅也は意を決して目を閉じ、影たちに向き合うことにした。
最初は恐怖で震え上がっていたが、少しずつ心の中で暖かさが広がっていく。
「これが自分の一部なんだ」と思えるようになった。
その瞬間、影たちは徐々に色を失い、小さな光に変わっていった。
その後、雅也はネオンの街に戻っていた。
全てが元通りになったかのように感じられたが、彼の心の中には変化があった。
哀しみや不安、自責の念が飛び去り、代わりに自己受容の感覚が残っていた。
彼は老女のもとに戻り、感謝の意を伝える。
老女は微笑みながら、「真の癒しは、自らの心と向き合うことから始まるのよ。あなたは一歩踏み出したわ」と言った。
それを聞いた瞬間、雅也は自分の心が軽くなったように感じ、未来に向けてまた歩き出すことができる気がした。
その後、友人たちも彼と一緒に店舗を後にし、ネオンの光の中での明るい未来を思い描くことができた。
依存からの解放は、彼にとって新たな始まりを意味していた。