止まった町、そこは人々が集うことを恐れる異質な場所だった。
かつては賑やかな商店街が広がっていたが、今は廃墟と化し、静寂が支配する。
さまざまな噂が飛び交うが、真実は誰も知る者はいなかった。
ただ一つ、学がこの町に足を踏み入れた瞬間、彼は何かに気づいてしまった。
学は大学生になったばかりの青年で、友人たちと都市伝説の真偽を確かめに、肝試しをすることにした。
持ってきたのは蛍光灯の明かりだけ。
それが頼りだった。
町は暗く、不気味なオーラに包まれていた。
彼の心には恐怖が広がっていくが、それ以上に好奇心が勝っていた。
彼が町の中心に近づくにつれ、異様な静けさに包まれていった。
どこからか、かすかな風の音が漂ってくる。
すると、急に何かが走り去る音が耳に残った。
振り返るも、そこには誰もいない。
心臓が高鳴る。
彼は友人と離れないように気をつけながら、さらに進むことにした。
そのとき、どこかから「い…」という囁きが聞こえた。
思わず立ち止まる学。
声の正体を探ろうと、辺りを見回すが、その姿は見えない。
「行かないで…」その言葉が胸に響いた。
誰かが彼を引き止めているように感じたが、彼はその場を離れなければならなかった。
次第に、学は自分の足元に影が現れるのを見た。
それは彼の動きに合わせてついてくる。
影は普通のものとは違っていた。
ぼやけていて、存在しないように見えたが、確かに彼の周りを取り囲むように動いていた。
恐怖に駆られた学は走り出し、見えない影との距離を取りたかった。
しかし、影はいつも彼の後ろにいた。
その瞬間、町が震えているかのように感じた。
周囲の様子が変わり始め、まるで学の内側に秘めた恐怖が具現化しているかのようだった。
影は明らかに彼に何かを訴えかけている。
彼は、自分自身が抱えていた不安や恐れの象徴であることに気づいた。
影は周囲を暗く包み込み、学はただ一人、そこに立ち尽くした。
「自分を受け入れろ」という声がこだまする。
彼は心の底で感じていた「身」への恐怖と向き合うことにした。
悔いを乗り越え、自己を受け入れるための勇気を振り絞った。
その瞬間、影がまるで彼に答えるかのように、彼の周りを取り囲んでいた。
暗闇の中で学は自分を見つめ直し、心の奥に潜む不安や恐怖が彼の影となって現れているのだと認識した。
彼はようやく、「これが私だ」と受け入れることができた。
すると、影は彼を解放するかのように静かに崩れ始めた。
再び静寂が訪れた。
影たちは姿を消し、彼の周りにはただの闇だけが残っていた。
学はその場でゆっくり深呼吸し、恐怖から解放されたことを実感した。
今度は逆に、その闇の中に希望があることに気づいた。
影が彼に理解をもたらし、身の内に秘めていた感情の真実を教えてくれたのだ。
学はその町を後にすることにした。
その日、怪しい町での体験は彼の心に刻まれただけでなく、彼を強くした。
彼は恐れず未来に進む準備ができていた。
この町が持つ真実の影に触れ、その影が教えてくれたのは、自分を受け入れることが最も大切だということだった。
